第4話 突然の別れ

「頭、痛い……」


私は、酔ってソファーで寝ちゃったんだ。


私は、昨夜の出来事を思い出していた。


彼に会いに行った時に「俺、結婚するんだわーー。彼女、妊娠してさ!レイラ、じゃあな。お疲れーー。今まで、ありがとな」


私は、ショックを隠せなかった。


どうして……。

彼とずっと一緒にいたいと思っただけなのに……。


昨日、酔っぱらって帰宅したんだ。


私は、昨日頭を撫でられた事を思い出していた。


「あっ!ブッコローとトリ」


思い出したのは、ブッコローとトリが慰めてくれた事。


「あー、いたいた。ごめんね!昨日は、ありがとう」


私は、ブッコローとトリの頭を撫でる。


「あれ……??」


確か、何かのセンサーに反応して喋るはず。


AIが搭載されてるから、私の名前を呼んでくれてたよね……?


「おーーい。ブッコロー!!トリ!!」


何故か、何も話さない。


「どうしたのかな?壊れたのかな?」


私は、スマホを取り出してぬいぐるみが喋らなくなった事を検索する。


【電池切れ】をまず疑うべきだと書かれている。


「電池、電池」


ぬいぐるみを触っても、電池を入れられる場所が見つからない。


「おかしい。だって、ずっと会話してたじゃない」


調べても、調べても、調べても。


答えには辿り着かなかった。


お喋りなぬいぐるみは、喋らなくなってしまった。


♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡

あれから、3ヶ月ーー


「レイラ、今日は有隣堂でサイン会だよ」


「うん」


「何か、最近。元気ないわね。みんな心配してるよ」


「大丈夫だから。心配しないで」


「そうね。レイラは、みんなに元気を与えるのが仕事だからね!ちゃんと笑顔でサインしなくちゃね」


「わかってる。本番になったら出来るから」


私は、静香さんに笑って見せる。

あの後、色々知った事がある。


母が、家事をしに来れていなかった事、ブッコローとトリのぬいぐるみは話さない事。


それなら、あの数ヵ月は何だったのだろう。


まるで、私だけが別の世界にでも行っていたみたいで……。


「ついた!頑張ろうね!レイラ」


「わかってるよ。静香さん」


サイン会が始まって、あっという間に終わった。


「レイラ、ちょっと待ってて」


「うん」


私は、有隣堂の裏で座って待っていた。


「あの、レイラさん。さ、サインもらってもいいでしょうか?」


「はい、勿論です」


「無理しなくていいですよ。私の前で笑わなくても大丈夫です」


「え?」


「自然のままでいいんですよ」


彼女は、私を見つめてそう話してくれる。


「ありがとうございます」


涙が、ポロポロと流れてくる。


「あの、お名前は?」


「あっ!すみません。岡崎です」


「岡崎さんですね」


私は、岡崎さんへと書いてサインをした。


「一生大事にします」


「そんな。ありがとうございます。あっ!あのこちらのぬいぐるみは話さないんですよね……」


私の言葉に岡崎さんは、驚いた顔をする。


「レイラさんも不思議な現象に合ったんですね」


「不思議な現象?」


「はい。何かの偶然が重なった時、魂が宿るらしいんです。どうやって、宿るかはわからないんですが……。お客さんの中にも、ブッコローが話したって言う人がいましてね。もしかしたら、レイラさんの会いたかった人なのかも知れないですよ!」


私は、岡崎さんの話しに驚く。


「でも、トリも話したんです。そんな偶然なんかおこるわけないですよね」


「もしかすると、ブッコローが起こした奇跡かもしれないですね。会いたい人がいたんじゃないですか?あっ!すみません。仕事に戻ります。レイラさん、これからも頑張って下さいね」


「ありがとうございます」


私は、岡崎さんに頭を下げた。


「レイラ、帰ろうか」


「うん」


「何か、元気になったみたい!よかった」


「うん。ちょっとね」


私は、いつものように静香さんの車に乗り込む。


「その子達、ずっとお気に入りね」


「そうだね。私を支えてくれたからね」


私は、隣に座るブッコローとトリの頭を優しく撫でる。

私は、流れる景色を見つめながら思っていた。


【会いたい人に出会える奇跡。だとしたら……】


『レイラーー』


『レイラちゃん』


もしかすると、あの二人だったのかも知れない……。


♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡

俺と田所は、レイラを見つめていた。レイラの笑顔を見ながら、俺達は呟いていた。


【レイラ、俺が君を守るから♡】

【レイラちゃん、僕が君を守るから♡】


形は、変わっても俺達がレイラを想う気持ちは変わらないから……。


「静香さん、また明日ねーー」


レイラは、俺と田所をギュッーと抱き締めながら手を振って笑った。


「これからも、よろしくね!ブッコロー、トリ!!」


俺と田所は、レイラの家に帰る……


俺達を見つめていた。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

君を守るから♡ 三愛紫月 @shizuki-r

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ