第3話ライバルのブッコローとトリの日々!
『じゃあ、俺達はライバルって事になるな!』
『そうなりますね』
『どっちが、レイラと付き合えても恨みっこなしだぞ!わかったな!』
『わかりました』
『じゃあ、開始だ』
ってなわけで、俺と田所はレイラと付き合う為の作戦を実行する事にした。
『でも、何やるにしても服着なきゃだよなーー』
『そうですよね』
俺は、鏡に映る自分の姿を見つめてからふと考えていた。
裸な理由とさっきの言葉。
気になった俺は、田所に尋ねる事にした。
『あのさ……。さっきのやつが、ぬいぐるみって言ってたの覚えてるか?』
『あっ、はい!言ってましたね』
『だったら俺達は、ぬいぐるみなのか?』
『どう見たって人間です』
『だよなーー。でも、動きづらいと思わないか?身長が縮んでるみたいに視界も低いし……』
『あっ、確かに!言われてみればそうですね』
『なぁーー。田所って何してるやつなんだ?』
俺は、田所を見つめながら話す。
『僕は、スーツの販売員として働いています。藤宮君は?』
『俺は、ホストだよ!No.2やらせてもらってる』
『それで、何故ここに?』
俺は、田所の言葉に少し思い出そうと努力をしてみた。
しかし、No.3の誕生日イベントでシャンパンをかなり飲んだ事以外覚えてはいない。
『田所は、ここに来る前何してた?俺は、シャンパンを飲んでた』
『僕は、先輩の昇任のお祝いに後輩二人と一緒に居酒屋で飲んでました。それしか覚えていないですね。気づいたら、ここにいました』
俺と田所が、お酒を飲んで酔っていた事だけはわかった。
『まぁ……。思い出せないなら、仕方ないよな』
『そうですね』
『そんな事より、レイラを振り向かせる方法を考えないとな』
『そうですね』
俺も田所も、この現状を思ったより深刻には考えていなかった。
(いやいや、考えなきゃダメだろ!)って突っ込みはいれないでもらいたい。
今は、レイラを振り向かせてあの男(クズ)から引き離す事に時間を使わないと!!
『まずは……』
『片付けしましょうか?』
『おっ、そうだな!』
忙しいのだろうか?
レイラの家は、綺麗だとは言えない状態だった。
『忙しいんだな』
『そのようですね』
『じゃあ、手分けしてやるか!』
『はい』
俺と田所は、手分けして片付けを始める事にする。
が………………。
なかなか、物が掴めない。
『何だよ!!どうなってんだよ』
ボンっと机を叩いた瞬間、リモコンが床に落ちてTVがついた。
「いやーー。何度見ても、エンジェルローズの走り方は綺麗ですよねーー」
マジか!大好きな競馬がやってるではないか!いつもなら、スマホで馬券を買うのに、スマホがない。
どうするかなーー。
あっ!
俺は、レイラの家の電話を見つめる。
『そうだ、そうだ』
俺が電話に向かおうとした時だった。
『ダメですよ』
『えっ?何がだよ』
『競馬の馬券買ったらダメですから』
俺は、田所に邪魔をされる。
『な、な、そんな事するわけないだろう……』
『怪しいですよねーー。じゃあ、何で、電話に向かおうとしたんですか?』
『そ、それはだな』
俺は、田所に言い訳を考える。
と、そこに……。
ピリリリと電話が鳴る、ピーと留守電に変わった。
「もしもし、ママだけど。今日から、一週間。片付けとご飯作りに行けなくなっちゃったの。パパがね」
プー、プー、プー。
電話が切れてしまった。
俺は、田所と顔を見合わせていた。
『これは、チャンスですよ!藤宮君』
『そうだな』
田所は、気づくと電話の所にいる。
『な、何をするんだ!』
『留守電、消しておかないと困るでしょ?』
田所は、留守電を消した。
俺達は、手分けしてまた片付けを始める。うまく掴めなくて、イライラしながらも俺は片付ける。
俺が、洗濯物を回して戻ってくると田所は、ご飯を作っていた。
『料理出来るんだな』
『はい!得意なんです』
そう言いながら、田所は料理を作っている。
俺達には、お互いの見た目はどう見ても人間だ。
だけど、レイラは俺をブッコローと言ったし、あいつをトリと言った。
どうなってるんだろうか?
どんな見た目に見えるのだろうか?
『あっちっち』
田所は、キッチンで叫んでいる。俺は、走って田所を見に行く。
『大丈夫か?』
『大丈夫です。ちょっと油が跳ねただけですから』
田所は、笑いながら炒め物をしている。
『無理するなよ』
『大丈夫ですよ』
田所は、笑った。
俺は、田所の足元に落ちたそれを拾った。
白いそれは、フワフワだった。
確かに、ぬいぐるみの材質だと思った。
お客さんで、ぬいぐるみが好きな女の子が居て……。
彼女が持っていた小さなテディベアと同じ材質。
『どうかしましたか?』
『いや、何もない』
俺は、田所に嘘をついて、それをゴミ箱に捨てた。
今、やらなければいけないのはレイラとあいつを別れさせる事で!
俺達のどっちかが、選ばれる事だ!
俺と田所は、必死で家事をやった。
『終わりましたね』
『終わったな。はぁーー』
『眠いですね。少し、休みますか?』
『そうだな』
♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡
「お母さん、やっぱり来てくれたんだーー」
声が聞こえて、目を開ける。
やっぱり、レイラだ。
『レイラ、お帰り』
『お帰りなさい。レイラちゃん』
「わぁーー。すごいね!君達は、お利口さんだねーー」
レイラは、俺と田所の頭をよしよしと撫でてくれる。
『レイラ、あいつと別れろよ』
「えっ?!ブッコローは、焼きもちやいてるの?AIってやつ?凄いねーー。最先端だね」
レイラは、キャッキャッとはしゃいでいる。
『真剣に言ってんだよ!俺は』
「うん、うん。わかった。わかった」
レイラは、全く俺の言葉を聞いてくれる気配がない。
『レイラちゃん、君は幸せ?』
「トリ君!君まで、そんな事を言うんだねーー。幸せに決まってるでしょ!」
『そうは見えないよ』
「どう見えてるか知らないけど!私は、幸せだよ」
レイラは、田所の話しも相手にしなかった。
俺達は、それでもレイラの身の回りの事をし続けた。
でも……。
レイラは……。
「やっぱり、お母さんの作るご飯は最高!!」
「お母さんが来てくれるから、何もしなくていいから助かる」
と喜んでいる。
当たり前だ!
『あーー。作戦失敗じゃねーーか?』
『やっぱり、僕達はぬいぐるみなんですかね?』
田所の言葉に、俺はあの日拾ったフワフワを思い出していた。
ぬいぐるみ……だって……。
『ど、どうだろうな?俺には、田所は人間にしか見えないから』
俺は、田所に言えなかった。
『僕もですよ』
田所と俺は、笑い合った。
結局、俺達がやってる事をレイラは気づかなかった。
そして、一ヶ月が過ぎた。
その日のレイラは、ボロボロだった。
『レイラ、大丈夫か?』
『レイラちゃん、大丈夫?』
俺と田所は、レイラの頭を撫でた。
「慰めてくれるのーー。ブッコロー、トリーー」
レイラの涙が、ポタポタとテーブルを濡らしていく。
『何かあったのか?』
『仕事で嫌な事とかあったの?』
レイラは、首を左右に振った。
『じゃあ、何だ?』
レイラは、俺と田所を見つめる。
「私の事をわかってくれて、愛してくれてるのは君達だけだよ」
レイラは、酷く酔っているのがわかる。
お酒の匂いが、鼻をつくのがわかった。
「愛してるよ!ブッコロー、トリ」
レイラは、俺と田所の頬に優しくキスをしてくれる。
ドクン……。
ドクン……。
ドクン……。
胸が高鳴っていくのを感じる。
『レイラ』
『レイラちゃん』
『俺達が』
『僕達が』
『君を守るから♡』
田所と俺の声が響いていく。
「ありがとう♡」
レイラは、ニコニコと微笑みながら眠ってしまった。
『レイラ、愛してる』
『レイラちゃん、愛してるよ』
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