第2話 目覚めたブッコローとトリ

『ああーー。何かわかんねーけど。動きづれーーなーー』


俺は、目覚めた。


『つうか、何か。ここ何処だ?』


俺は、辺りをキョロキョロしていた。


デカイ姿見に俺が映る。


『やっぱ、カッコいーーわ、俺。つうか!何で裸?』


俺は、姿見に映る。

美しい腹筋を撫でていた!


『うるさいですねーー』


『は?』


俺の家なのに、何故か男の声がする。


『さっきから、貴方は何なんですか!僕が、ゆっくり寝てると言うのに!』


『寝てるって、此処、俺んち何だけど』


『何言ってるんですか!ここは、僕の家ですよ』


『はぁーー?意味わかんない事いってんじゃねーぞ』


声の主は、俺に近づいてきた。


『そ、それなりにイケメンじゃねーか!』


そいつは、塩顔でスクエア型の銀縁眼鏡をかけている。いわゆるインテリイケメンってやつだ。


『な、何で!僕は、裸、何だ!!』


そいつは、姿見を見て驚きながら体を隠す仕草をしている。


『お、お風呂上がりか?』


『どうだろなーー。何故か裸何だよ』


『どうなってる?』


『俺に言われても困るよ』


俺は、頭を掻きながら笑う。


『僕の名前は、田所凛太郎たどころりんたろうです。そちらは?』


『あーー。俺は、藤宮洋太郎ふじみようたろうだ。よろしくな』


『こちらこそ、よろしく』


俺と田所は、握手をする。


『とりあえず、此処は田所の家なのか?』


『嫌、違う。僕の家には、大きな本棚があった。藤宮君の家なのかな?』


『違う。俺の家には、運動器具が置いてあった』


『そうか……。では、ここは一体誰の家なのだろうか?』


『確かに、そうだよな!だけど、何か眠くて動けないわ』


『僕も同じだ!一度、寝てから考える事にしよう』


『だな』


俺と田所君は、いったん眠る事にした。


『なっ、なっ、なっ』


目覚めた俺は、焦っていた。


綺麗な女の子が、俺を見つめているからだ。


「知らなかったけど、君は喋る機能があるんだねーー」


彼女は、つんつんと俺の鼻を指でつついてくる。


『や、やめろーー』


「アハハハ。やめろだって、可愛いねーー」


彼女は、俺をヒョイと抱き抱える。


(待てよ!こんな華奢な女の子が、何故俺を持ち上げられるのだ?)


「君は、存在感ある大きさだねーー。今日、帰ってきたら一緒に寝ようね」


(ね、寝るーー!!待て、待て。それは、あり得ない。彼女と俺は付き合ってるわけじゃない)


「ハハハ。可愛いね、ブッコロー」


(ブ、ブッコロー?!何だ、そのダッセイ名前)


俺が、そう言った時だった。


「何、君は話せちゃうの?!」


『聞こえてるのか?』


「あーー、凄い。AIってやつなのかな?どうなってるの?電池入れる所とかあるの?」


『やめろ、くすぐったい。アハハ。やめろ』


「凄い、凄い!最新の技術だよねーー。ブッコロー!君は、凄いね」


『だから、その名前やめろ!俺は、藤宮洋太郎だ!』


「ふじみやようたろう?」


『そうだ!洋太郎様でも藤宮様でも許してやる』


「アハハハ。許してやるって何よーー。じゃあ、君は洋ちゃんだね」


『よ、ようちゃん……!?』


(つうか、こいつ。顔小さいし、すげーー可愛い。しかも、いい匂いがする)


『うーーん。さっきからうるさいですね』


「えーー、君も喋れるのトリ!!」


そうだ、もう一人いたのを俺は忘れていた。


『トリ?』


「最先端技術ってやつでしょ?凄い、凄い!!」


彼女は、キャッキャッとはしゃいでいる。


ふざけるな!俺をドキドキさせておいて、浮気だと?!


『おい、お前!』


「お前じゃないよ!レイラだよ」


『はあ?おい!レイラ。俺以外のやつときやすく喋っていいと言っていないぞ!』


「アハハハ。焼きもちまで妬くの?可愛いね」


レイラは、俺の頭を優しく撫でてきやがる。


『や、やめろ。ふ、ふざけるな!撫で撫でするんじゃねーー』


「アハハハ。撫で撫でしてくれて嬉しいんでしょーー」


『ふ、ふざけるな!』


俺は、レイラの手を振り払おうとするけれど……。


うまく振り払う事が出来ない。


何だ!この体……。


うまくいう事がきかない。


『あのーー。もしもし、さっきから僕は何を見せられていますか?』


「あーー、ごめんね。トリ。君も撫でて欲しいんだね」


レイラは、田所を撫で始める。


『やめてくれ!それに、その名前は何だろうか?僕の名前は、田所凛太郎だ!そんな名前ではない』


「えーー。君も、AIがついてるんだね。どこに電池があるのかな?」


『電池?何の事だ!ハハハ、やめてくれ!ハハハやめてくれ!』


田所は、身体中を撫で回されている。


「君は、トリじゃなくて凛ちゃんだねーー。よしよし」


レイラは、田所の頭を撫でている。


『おい!レイラ!お前は、魔性の女なのか?』


「えっ?どうしてそうなるのよーー」


ピンポーンー


レイラが、そう言った時だった。インターホンが鳴る。


「ごめんね。ちょっと待ってて」


レイラは、立ち上がってパタパタと急いで行く。


時計を見ると、朝の7時だ。


「レイラーー。1時間だけしかいれないけどごめんなーー」


『なっ、なっ!』


俺と田所は、顔を見合わせる。そこに現れたのは、いかにもチャラそうな男だった。


「ううん。レイラも、11時には迎えに来るから……」


「そっか、そっか!じゃあ、急がなくちゃいけないよなーー」


「コウちゃん。女優のユキと週刊誌に撮られたってのは?」


「あーー、あんなの向こうが勝手にそんな風にしただけだからさーー。別に付き合ってるわけじゃないのにさーー」


俺は、ホストをしているからわかる。

こいつは、嘘を言っているのが……。


「何!レイラ、信じてくれないの?だったら……俺達さ」


「ううん。信じるよ!コウちゃんは、レイラに嘘ついた事ないから」


「だよなーー」


二人は、別の部屋に消えて行った。


………………30分後。


カチッ……。

コウちゃんと呼ばれたやつは、煙草に火をつける。


『ゴホッ』


『煙いなーー!やめろや』


「うわーー。喋るぬいぐるみとかキモいわぁーー。レイラのこういう趣味大嫌いなんだよなーー。まあ、しばらく楽しんだら別れるかなーー。やっぱり、ユキの方がいろんな意味でよかったしなーー。レイラは、まだまだなんだよなーー。なのに、めんどくさい事ばっか要求してくるんだよなーー」


この男が、レイラを愛していないのがわかった。多分、都合よく使っているんだと思う。俺の業界にも、同じようなやつがいるからわかる。


『お前、クズだな!』


俺は、つい口に出してしまっていた。


「チッ!そんな言葉、レイラが教えたのか?」


そいつは、舌打ちをして俺を睨み付ける。ヤベッ!どうしよう……。


『違います。テレビでやっていたからです』


困った俺の代わりに、田所が、話してくれた。


「うわっ!二体も喋んの?キモすぎ。まーー、そうだよなーー。レイラがそんな言葉言うわけないってわかってたわ!」


そいつは、そう言ってから、煙草を消して立ち上がる。


「コウちゃん、もう行っちゃうの?」


「ごめんな!レイラ。また来るから」


「うん」


チュッ……。


レイラとそいつは、キスをした。


「じゃあな!レイラ」


「うん、気をつけてね」


そいつは、帰って行く。


『俺が』

『僕が』

『守らなきゃ!!』


俺と田所は、同時に同じ言葉を発していた。


『田所』


『ごめん。僕、レイラちゃんを好きになっちゃったみたいで』


田所は、照れくさそうに頭を掻いている。


『き、奇遇だな!俺もなんだよ』


『藤宮君もか!可愛いもんな!レイラちゃん』


『ま、まぁな』


『どっちが選ばれても恨みっこなしでどうだろうか?』


『構わないぞ!』


『じゃあ、お互い遠慮はなしって事で』


『わかった』


こうして、俺達はお互いにライバルになった!


目標は、一つ。


レイラとあいつを別れさせる事!!


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