夢散歩

赤城ハル

第1話

 あれは北海道に赴任していたある冬の深夜のこと。

 就寝していると急にタバコが吸いたくなって目を覚ました。しかしながら手持ちのタバコはない。

「我慢、我慢」

 俺は布団に入って我慢しようした。けれど駄目だった。我慢と念じるほど逆に吸いたくなる。

 とうとう我慢できなくなり、俺は布団から出て、パジャマのズボンを脱ぎ、スラックスを穿いて、上は着替えずにジャンパーを羽織り、コンビニに出かけることにした。

  

  ◯


 空はけぶっていた。白に近い灰色の中にピンク色とオレンジ色が混ざっている。

 遠くの街灯がオレンジ色に空を燃やしているかのように見えた。

 そして暗くなく、遠くまでが見通せられる。

「白夜か?」

 初めての経験なので、それが白夜かどうか分からなかった。

 俺は雪に覆われた道を進む。進むたびに俺の足跡が残る。

 ざくざく雪を踏み続けて、コンビニに着いた。

「66番」

 カウンターで告げるが、金髪の店員に、

「さーせん。タバコ品切れなんすよ」

 と、店員は棚全体を指す。

「どれも?」

「セブンならありますよ」

「じゃあ、それで」

 タバコを買って、コンビニを出るとなぜだか少し寄り道することにした。

 普段はまったく通らない道を通る。

 そして広い雪原に行き当たった。

「こんなところがあったんだ」

 ちょっと雪原を歩いてみようと隣の林に沿って歩く。

 その時に一頭の馬と出会でくわした。

「野生の馬?」

 その馬にじっと見つめられるとなぜか不安に駆られた。入ってはいけない領域に踏み込んだことを咎められているかのような気がした。

 それで俺はUターンして、元来た道を戻った。

 けれど次第に雪が強く降り、積もっていく。

 どんどん。

 どんどん。

 いつの間に腰まで雪が積もり、俺は動けなくなった。

 雪は容赦なく降り積もり、とうとう俺の頭を……。


  ◯


 目が覚めると部屋にいた。

「なんだ夢か」

 しかし、俺はコンビニに行く時の服装だった。そしてポケットにはセブンがあった。

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夢散歩 赤城ハル @akagi-haru

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