第7話 夢

 時々寝苦しくて夜中に目を覚ますことがある。金縛りも既に何度か経験している。会社で嫌なことがあったり、親しい友人と揉めた後などが多いような気がする。


 真っ暗な闇の中で、禍々しき魔物に襲われ追われていた。死に物狂いで、それから逃げていた。肩に刺さった鋭い爪の痛みと喰わられる恐怖で、


 思わず目が覚めた。


 真っ暗な自分の部屋の中、見上げた時計は2時を指している。6月の蒸し暑い空気が肌にベトつくはずだった・・・・・


 涼しい、いやむしろ肌寒いほとだ。

 首が動かない。

 手も足も身体も、

 全てが凍りついたように。


 頭の上に何かいる。

 枕元に何かいる。

 何かがいる、人間ではないものが。

 首か動かないから確認できないが、

 何かいる・・・・・


 ベットの右にある窓ガラスに、金縛りにあった身体の中で唯一動かせる視線のみ送った。


 窓に映る自分の寝姿。

 立っている。

 髪の長い女性が。

 枕元に私の顔をのぞき込むように。


 鋭敏な耳が静かな呼吸音を捉える。

 湿った呼気の香りがする。

 額に長い髪の先が触れる。

 のぞき込んでくる。

 逃げられはしない。

 身動きができないのだ。


 のぞき込む気配が顔に近づく。

 目の前に青白い顔をした女性が、

 じっとのぞき込んでくる。


 見つめる瞳に無限の闇が映る。

 なんの感情も感じられない、

 希望の光も夢もない、

 底の無い闇だけが映る。


 白く柔らかな唇が動き、

 囁きとともに、

 身体の芯に冷気が流れ込む。


 「一緒に 行こう・・・・・」


 連れて行かれる。

 この世ではない世界に。


 『イヤだ』否定する声が、自分の固く閉じた唇に閉じ込められた。


 思わず目が覚めた。


 真っ暗な自分の部屋の中、見上げた時計は2時を指している。6月の蒸し暑い空気が肌にベトつくはずだった。


 涼しい、いや、むしろ肌寒いほどだ。

 首が動かない。

 手も足も身体も。

 全てが凍りついたように。


 頭の上に何かいる。

 枕元に何かいる。

 何かがいる。人間ではないものが・・・・・

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