2章 魔法騎士学校編

第13話 門出


あれから半年後


レイブン含めた魔王軍との衝突後、両国内は不安と歓喜の声で溢れていた。


フリーズとジャイドは一命を取り留めたが、フリーズは精神的に不安定になり、引き籠り、ジャイドは何やらまた謎の単語をずっと呟いているらしい。



「レオン様、本当によろしかったのでしょうか…」


「ん?あぁ、正直多くの人の前に出たりするの苦手だし、レイブンを倒せたのはベッドロックさんがいたおかげだしな。」


結果的に魔王軍幹部を倒した者はベッドロックと言う認識となり、英雄と称され、銅像が完成間近となっていた。


「なんて謙虚なお方…!」





そして俺達は今、帝国の中心地であり、貴族の街“グローリア”に向かっている。


本来ここには平民はあまり立ち寄らない。

貴族達に馬鹿にされたり、目をつけられるからだ。だが今日はそこまで平民も気にはしない。



グローリアは1年に1度大きな祭りがある。

今魔王軍と最前線で戦い続けている勇者達は10代目で、魔王が誕生したと同時に発足された初代の勇者が発足されたのが今日というわけだ。

ちょうど500年目だからか、真冬なのにかなり熱気が感じられる。



「ヘルム、じゃあここでお別れだな。行ってきます」


「はい!頑張ってきてください!!」


「おう、ユドラもいい子にしとけよ〜」


「わ、わかりました!」


「特にヘルム、問題行動起こすなよ」


ガーーン!「そんなに私信用ありませんか…」



俺達はそんな祭りを楽しんでいる貴族や平民の前を通り過ぎて、ある建物の前で止まる。



“グローリア魔法騎士学校”、作中で4つしかない魔法騎士学校であり、初代の勇者5人のうちの1人を輩出した有名校。


俺達の目的はここの入試を受けることだ。


魔法騎士学校は魔王が誕生する前から存在する。校舎はどうやらなんらかの魔法で劣化を防いでいるらしい。ちなみにワルデザでもこの学校には入れる。多くのプレイヤーが成人したばかりの女のCPUと恋愛をしようと門を叩くが、無事不合格した。


剣術はこの半年以上ずっと学んできたからレイブンともギリギリ渡り合えるほどにはなっていた。が、それは知識に頼りすぎた面もある。魔法に関してもあって困るものじゃないからこの際X等級魔法くらいは覚えたい。

ちなみに学校は最短で4年間で卒業できる

ゲーム内だとかなり短縮されて200時間ほどで終わるようになっている。


ドンッ


「門の前で突っ立つな、平民風情が」


「あ、すいません」


「ふんっ、記念受験だとしたら早く帰るんだな。」


貴族の中にはこうやって平民を見下す奴もいる。これはまだ優しい方かもしれないな


ガシッ!


「口の利き方には気をつけてください」


めっちゃ怖い笑顔なんですけど?!

ヘルムさん、そんな怒らんでも…


「離せ!ったく、平民の垢がつくではないか」


『はーい、受験番号1番から100番の人は第1試験場、100番から200番は第2試験場、そんな感じで別れてくださーい』


試験官が音響魔法で何度も同じことを唱える。


「それじゃ、また夕方ごろ帰ってくるから」

 

「はい!」









–第2試験場–



「全員集まったな?では、これから試験の内容を説明する。試験は3種類、『魔術試験』『剣術試験』『学力試験』だ。それぞれ200点、200点、250点が最高点だ」


この試験の出来によって学校に入ってからのイベントがかなり別れる。学力試験は前世での中学レベルだから8割くらいは取れるだろう。他の試験も目立ちすぎないように良い成績を残そう。正直面倒なイベントにはもう巻き込まれたくない。


「まず最初に魔術試験を行う。試験番号の早い順に列に並べ。」






「試験内容は至って簡単。※魔力感知石に手をかざして、その後自分の最も得意な属性の魔法をあの的に当てるだけだ」


会場がざわつく。


試験の内容はどの試験場も変わらない。

弱い者を切り捨てる学校だ。

50m先の半径10cmほどの的に当たる前提で試験を始める。まぁ膨大な魔法ならほぼ確実に当てられるけどな。


※魔力感知石…対象者の魔力測定が行える特別な石。ステータスに載っているものより少し高い数値が出される(体内に秘められている魔力も感知するから)



「受験番号1番、早くしろ」


「は、はい!」


“25”という数字が表示される


「『火砲フレア・キャノン』!!」


ヒュー…ボウッ!



少し外れたか…



「…失格、帰っていいぞ」


「え?」


「聞こえなかったか、帰っていいぞ」


第2試験場、プレイヤーの中では“地獄の関門”と呼ばれている。

試験官であるアッカード=ジャウエストは第10まである試験場の試験官の中で最も厳しいと言われている。100人いた受験者が10人になることも少なくない。


「ちょ、ちょっと待ってください!まだ他の試験だってあるのにそれは勝手すぎませんか!」


「お前が受かる可能性は0%だ。まず魔力が55。これはD級冒険者と大差ない。次に火砲はII等級魔法だ。III等級魔法以上でないとここからの生活が厳しいだけだ。早く帰れ」


アッカード先生は教師として1年目だが、※魔法騎士団で勤めていた経歴がある。偶然だが今年はちょうど有名なヒロイン達が入学する年と一致する。もしかしたら実際に見れるかもしれないな。


※魔法騎士団…普通の騎士団と違い、魔法も武器も使う。主に貴族や王族の護衛をする。

各国に30人程度しかいない精鋭の集まり





「帰れ」「帰れ」「帰れ」「帰れ」「帰れ」




受験番号10番まで、全員が帰ってしまった…

中には激怒した貴族もいたが、すぐに押さえられてしまう。


「次、11番」


「ん、」


“260”


「『冠氷カイザーアイス』」


ドガァァン!!!



「ふん、やっとまともな奴が出てきたようだな。 V等級魔法か。」



「V等級だと!?平民がそんな魔法を扱えるわけがない!!それに魔力もA級冒険者級だ!」


先ほど俺につっかかってきた貴族か、あいつも同じ試験場だったんだな。


「彼女は実際に結果で示した。まだ実力を見せていないお前が言うことはない。」


ゲーム内ではこの年の第2試験場から出た合格者は、2人しかいなかった。その中の1人が彼女イヒカ=スティーリア=グラキエス。

最終的に※第5席として入学し、有名なヒロインとしては数えられないが、かなりの人気を博した。桜色の髪、小さい背丈、それに氷のように冷たい視線、性格が刺さったとかなんとか。


※第5席…5番目の成績で入学したということ。


「ぐっ、、まぁいいでしょう。伯爵家の次男である僕がさっきの平民を上回る力を見せますよ」


“225”


「『灼熱導弾アルデンテ・ミサイル』」



「及第点だな」


「なっ!!魔力は確かにあいつより劣ってたかもしれないですが、魔法はV I等級魔法に近いです!それなのにその評価は!」


「業のチェイン・カルマ


ドドドドドド!!!


パラパラッ


壁が貫通した…!これが元魔法騎士!!


「これがVI等級魔法だ。威力が桁違いだろう。わかったならさっさとそこらへんで座ってろ」


伯爵家の次男は開いた口が塞がらなくなっており、数秒したら唇を噛みながら悔しい表情を浮かべて壁のそばに立っていた。



「11人終わったな、今のところ2人しか魔術試験を通過できていないぞ。これ以降の者に一応言っておくが、全力で来ないようならすぐに失格とする。実力を隠して合格できるほどこの学校は甘くない。」



成績表のような物から目を離してこちらを振り返り、鋭い目つきで受験者の方を見る。


「やっとまともな目をしてきたな。これは遊びじゃないんだ。では、再開するとしよう」












––––––––––––––––––––––––––––––

第2章始動!!

今まで1章では1週間に5話の投稿でしたが2章からは1週間に4話の投稿に頻度を落とそうと思います。理由としては勉学との両立をするにあたって忙しさが増すと執筆活動に嫌気がさすようになると思ったからです。

ご理解いただけると幸いです!これからも皆様が楽しめるような作品を届けていけるように努めていきます!!

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