第14話 地獄の関門


試験開始から40分


–第2試験場–


すでに100人いた受験者は半分になり、淀んだ空気感に包まれていた。



「次、56番」


「おい!次は公爵家のドレッド=ルート=セイバー様だ!!」


やっと2が出るのか…


ドレッド=ルート=セイバー。後に首席合格を成し遂げる男。金髪のイケメンで魔法も剣も一流という完璧超人。その分プレイヤーには嫉妬されている。

のちに貴族においては初の11代目勇者の1人である“赫焉かくえんの勇者”になるという異業も成し遂げている。



「では、全力で行かせていただきますよ。先生」


ピリピリっ


こんなに離れているのに膨大な魔力を感じる…!!


“399”


なっ?!この当時から魔力が400近いってやばすぎるだろ…


「“亜宵月デミ・オルトロス”」



セイバーの手には何重にも重なった魔法陣が広がる。


VII等級魔法!!それにあれはセイバーが創った魔法だ。魔法陣を重ねて桁違いの威力を繰り出す。


セイバーが光の槍のようなものを放った瞬間凄まじい速度で数々の魔法陣を通過して、、


ドォォォォォォォォォン!!!


「はぁ…はぁ…どうですか先生。」


「練度も威力も高い。魔術は申し分ないな」


「「「「ワァァァァ!!!」」」」


会場が今までにない盛り上がりを見せる


「あの堅物を褒めさせたぞ!!」


「流石セイバー様だ!彼こそが頂点に相応しい!!」


「きゃー!!セイバーさまぁ!!!」


「くそがッ、俺だって伯爵家の長男だというのに!」


「すごいね、でもあんな魔法あったっけ?」


「あれは僕が創った魔法さ、ここで見せるつもりはなかったけど本気で行かないといけないようだから。」


「ふーん」




そして運悪いことに、セイバーの次は俺だった、、、、


「57番、急げ。」


「はい、」


あいつの後とかハードル上がりすぎてるだろ…まぁ出せる力は出すけど。


レイブン戦で改めて魔法の重要性に気づいてから、levelが上がるたびに魔力にステ振りしていた。適性魔法は火と水と闇の3属性に。しかし、元の魔力が低いため I等級魔法を習得するだけで5日を費やした。


「?どうした、早く手をかざせ」


手先に体内の魔力を集めろ、もっと、もっと!


“270”


「なにっ?!何故こんなにも平民が高いのだ!!」


今できる最高の魔法を出してやる。闇魔法とは魔法を同時に出して、組み合わせる…!


黒薙緋蛇マラキア・サーペント


ズオッ…………ブォン!!





ドコォォォォォォォン


両方とも IV等級魔法だが、2つ合わせることでかなりの威力を出せる。


「「「…」」」


先程まで大盛り上がりを見せていた会場内は再び静まり返る。そしてたった今魔法を繰り出したレオンへと視線が集まる


「無詠唱で、※重複魔法…だと?」


「ん、平民の中では私が1番と思ってた。」


「無詠唱は僕もできるけどそれで重複魔法は無理だね…とんでもない逸材だ」


「…次58番」


帰れって言われなかったからとりあえず通過か…?しょぼかったかな…


3つ目の穴が空き、そろそろ修復しなければならなくなったのでアッカード先生が魔法で直し始める。




その後も帰宅を強いられる者が続出して、

魔術試験の通過者は21人であった。













「次は剣術試験だ。1人ずつ俺にかかってこい木刀で1撃でも与える事ができた者は通過でいい。1人制限時間は3分だ。11番スティーリア。こい」


「ん」


互いに向き合い、構える。



スティーリアは背丈は一般の女性より低く腕力はないが、機敏で数手先を読むことができる戦闘においての知能も持っている。


対してアッカードは元魔法騎士、背も高く服の下には質の良い筋肉で固められている。



ダッ!


スティーリアが飛び出し、正面からアッカードに斬撃を当てる、、








ように思われたが、アッカードが防御の姿勢をとった瞬間斜め下から斜め上は斬り上げる。剣を飛ばしてその後に1撃を与えるつもりだ。



カンッ!!



その思惑はアッカードの強固な守りによって破られる。


「もう一回…!」


さらに足を狙う


ガガッ!


「殺気が漏れている。狙おうとしてるところがバレバレだ。」



0.1秒でも油断したらどちらかが負ける戦いを目の当たりにした受験者は息を呑みながら瞬きをせずに見届けていた。


カン!カンカンカン!!ドガッ!



アッカードもなかなか本気で挑んできてるな

これじゃ学力試験にたどり着ける奴いなくなるぞ…?


「このまま何度も斬り合っても時間が過ぎるだけだぞ」


「わかってる、次で決める」


そう言って、数歩引いて、剣を構える。

スティーリアは幼い頃に両親に売られ、奴隷として生きていた。

この時代は貧しい家庭も多いと言えどもそんな行為は許されない。

だが、幸運にも平民の騎士の家庭に買われ、護衛役として鍛えられてきた。

買われる前の時点であらゆる感情はシャットダウンされており、口数が少ないまま十数年を送っていたのだ。

そして護衛役として1日10時間以上の鍛錬を積んだことで、人間として覚醒の期間を迎えていた。



スティーリアが踏み込んだ瞬間、みんなの視界から消える。

圧倒的な機敏性を利用して爆発的な加速力を生み出したのである。

アッカードの背後には剣を振りかぶろうとするスティーリアが、、、


「甘い、さっきより少し速くなっただけだ」


「違う。」


アッカードが振り向いたと同時に再び背後に回る。


カンッ!!!



「11番、剣術試験通過だ。」


「対戦ありがとう」


氷のような少女は魔法騎士への1撃を喰らわしても尚冷静だった。

その目はもう対戦相手に向けておらず、どこか遠くを見ていた。





「次12番」


「僕の名前はまだ覚えてないというのですか」


「実力者の名前しか覚えない主義でな。」


「このあと嫌でも見せて差し上げましょう。」





3分後





ゴンッ!!


「うぐっ、、俺がこんな教師に負けるはずが、」


「3分経過した。伯爵家だとしても実力は平民以下ということだな。」


「このっ!…ッ、覚えていろよ、平民ども」


いつまで平民差別してんだよこいつ…

結局名前教えなかったし、まぁ俺もこいつの名前覚えてないけど。




魔術試験でなかなか成績を残した者も、剣術ではアッカードに惨敗して帰ってしまう。

“地獄の関門”という名前は伊達じゃないようだ。





「56番、セイバー」


「はい、名前を覚えていただき光栄です。」


ゲームでは見れなかったグローリア魔法騎士学校の教師の中で5本の指に入る強さのアッカードと将来の首席の戦い…!ワルデザのファンから見たらこれほど楽しみな試合はないぞ!!



セイバーが構えたあとすぐにアッカードも構える。今日初めてアッカードが受験者を“敵”とみなした瞬間であった。



それほどこの男は総合的に自分に近い力を所持しており、剣術においては互角だろうと判断したということだ。



「では、行かせていただきます」










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