第5話 特攻隊長ラザノフ
とりあえずなるべくスピードに追いつき、相手の疲労を誘い隙をつくとしよう。そのために残りの経験値を攻撃と速さに追加する。
『ステータス』
レオン=グラーヴ=シドラ 15歳 Level36
【攻】50(+10) 【防】44(+6)
【速】155(+15) 【魔力】1(+0)
【知】2(+0) 【体力】500(+4)
経験値:0pt
【称号】転生者、生粋のモブ
【スキル】『超・攻撃力上昇』(攻撃力を10%UPさせる)『超・素早さ上昇』(速さを10%UPさせる)
「『超・攻撃力上昇』、『超・速度上昇』!!」
《第二ラウンド開始だーーー!!》
ラザノフの弱点はスピードが早すぎて小回りが効かないこと、つまり後ろに回り込むことが出来ればあとは心臓に剣を突き刺すだけだ。
剣と鋭利な爪が再び交わる。
ここで攻撃を流して、素早く後ろに!
《そんな簡単に後ろ取らせるわけねぇだろ、ばぁか!》
ザクっ!
「がぁあっ!!」
後ろに目でも付いてんのか!?なんで今のがバレたんだ…かなり体力削られちまったな
《人間にしてはよくやるじゃねぇか。まぁ人間だからそこまでしかできねぇんだ。》
「今度は俺から行かせてもらう!!」
誘うことが無理なら、奴のスピードを封じる
《おせぇ!!》
ピッ!タラァ…
今ッ!出した腕斬らせてもらうぞ!!!
ガキンッ!
《爪よりも肌の方が頑丈なもんでな、そんなナマクラで俺の腕は切り落とせないぞ?笑》
くそっ、誘うことも出来ない。スピードを塞いでも鋼鉄の腕がある…どうすれば…!
「レオン様!!連れてきました!」
「ッ!来たか!」
《馬鹿な奴らだ!すぐに王女を仕留めてやる!!》
標的はエリーゼと変わり、40mほどの距離を1秒で縮める。
《大人しくしねぇぇ!》
「止めろ!ヘルム!!」
ギギギギッ!
「うぐっ、重いッ!!」
ゴーレムに傷をつけるほどの腕力とスピードを持つヘルムでさえ、押される勢い。
ヘルムの実力を信じてよかった!この一撃で終わらせる!!
背後を取ったレオンはラザノフの心臓を捉えていた。
「エリーゼ!俺に出来る限りのバフ魔法をかけろ!!」
「えっ…?」
「早くしろっ!!」
「『
これは…!VI等級魔法!?
※バフ魔法…身体能力を向上させることができる魔法。生活魔法同様に習得しやすい魔法に分類される。
《くそっ!?このガキがッ!手を離せ!》
ヘルムはこの奇襲作戦を理解したのか、ラザノフが俺に背を向けたままの体制で手を掴んでくれていた。
全てにおいて数倍の身体能力を得たレオンはラザノフに互角の速さで心臓目掛けて進んでいた。
《コノッ!!人間風情がぁぁ!》
ラザノフは必死に脚でヘルムを蹴るが、握力が人一倍強くなかなか離そうとしない。
「うぅっ!レオン様…!もう、、」
パッ、 ラザノフは手が離れた瞬間、後ろに振り返り爪で切り裂いた。
《…は?》
そこにはレオンの姿は無く、切り裂いたのは空気であった。
「オォォォォ!!死ねぇぇ!」
《上だと!??!馬鹿め声を出すとはさっきも言ったが俺は防御力も!!》
数mジャンプしたことで斬撃に勢いが増し、さらに攻撃力も数倍になったことで、
キィィィィィン!…ズドッ!
ラザノフの体は真っ二つとなっていた。
《な…こんなふざけた…奴に…???》
ドサッ
「はぁ…はぁ…」
「ちょっと!説明しなさいよ!ここでなにが……?」
エリーゼはレオンを問い詰めようとした時、奥にある子供の残酷な遺体を視認してしまった。
「あぁ…ッ!誰がっ」ギリギリ
「誰がやったのよ!!レオン!」
「コイツ、魔王軍の手先だよ。人質にした後にすぐ殺したんだろう…俺がきた時にはもう…」
膝から崩れる音が聞こえた。そらそうだ。自国の何の罪もない子供が惨殺されているんだ。絶望でしかない
「とりあえずこの子供外に運んで俺らまでよう。ヘルム、手伝ってくれ」
–魔王城–
「どうされましたか、魔王陛下」
「ラザノフが何者かに殺された」
「なっ!?向かわせたのは雑魚の魔物しかいないダンジョンなはず!ラザノフを倒せるほどの者がいるとは…」
「まぁあいつ魔王様の前で調子乗ってたから痛い目にあってよかったんじゃないっすかね〜」
「そうよ、“リヴァルス”様に舐めた口を聞くからそうなるのよ。」
「お前ら全く…して、魔王様、ラザノフの代わる者を新たに採用しましょうか?」
「うむ、誰を採用するかはまたお主に任せるとして、ラザノフを倒したであろう者を探せ。このことを幹部総員に伝えろ」
「その者を見つけ次第殺しますか?」
「いや、此処に連れて我が軍に引き入れる」
「そんな!相手が人間の可能性だってあるっすよ!人間如きが魔王様の御前に」
「そうですわ!」
「静粛に、人間であったとしても重要な兵力になり得る。幹部の1人を向かわせろ。軍はどれだけ連れても良い。この際ガルタナ帝国とその隣国の軍事力を少々減らす。」
「「「はっ!!!」」」
魔王リヴァルスは兵を、幹部のこともただの駒としか見ていない。
幹部はそれを理解した上でも圧倒的な存在感と力に屈服し、魔王の言葉がこの世の真実かのように受け止める。
ラザノフの一件は魔王城内に伝えられ、すぐさまガルタナ王国への軍の侵略が決定した。
–ガルタナ帝国、とある空き家–
あの後案の定ダンジョンから外に出れるようになっていたので、エルフの子供を埋葬し、ギルドへの報告も済ませて家に帰ってきた。
「で、何でお前までついてきているんだ」
「エルフ王国のみんなに合わせる顔がないわ」
「俺ももうお前の顔見飽きたんだが?」
「私は仮にも王女よ!?もう少し敬意を示すべきでしょ!」
「はいはい、王女様はこんな埃くさい木造建築なんて好まないでしょうし、王宮でごゆるりとお過ごしください。お出口は左側です」
「泊めなさい」
…は?なにを言ってるんだこの女は、早く帰れよ…
「1日でいいから泊めなさい。私はお金も食料も持ってないのよ。」
「どうやってここまできたんだよ!?」
「魔法でどうにか」
エルフは魔法に頼りすぎだろ…
「すぐに終わる話かと思ったのよ。お金は要求されなかったし、それにあんた達のせいで魔力も底を尽きたのよ」
コイツぽんこつにも程があるだろ……
「さっきから失礼なこと考えてるでしょ!私もこんなとこに泊まるのなんてごめんなのよ!」
「レオン様の城を馬鹿にするな、コロスゾ」
「ひぃっ!」
え、何で俺にはこんなツンケンしてるのに子供のヘルムにビビってるの?子供嫌いなのか?
いやでもエルフの子供を助けらために単身で乗り込んだわけだし…
「と、とにかく!上の階借りるわよ!私はもう寝るから」
はぁ…なんかドッと疲れが溜まったな、、、
「そうだ、ヘルム。今日ゴーレム倒したんだってな。3、4ヶ月前はブラックウルフにビビってたのに」
「たまたま攻撃したところが急所だっただけで…それにレオン様こそかなりの大活躍でしたよ!!まさか魔王軍の隊長はどの階級の者を倒すなんて」
本当ゲーム知識が役に立ったよな…実際に見るとあれだけ速いとは。
でも俺みたいなモブがアレを倒して未来が変わらないといいが、、
レオンによって良い方向に進んだか、悪い方向に進んだのか。
後に大きな波乱が生まれることはこれっぽっちも思っていないレオン一行であった。
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