第2話 始まりの街

ブラックウルフに襲われてから3日が経過したある日



『ステータス』


レオン=グラーヴ=シドラ Level 10 15歳



【攻】26(+5) 【防】9(+1)

【速】15(+1) 【魔力】1(+0)

【知】2(+0)  【体力】200(+2)


経験値:0pt


【称号】転生者、生粋のモブ


【スキル】『攻撃力上昇』(攻撃力を5%UP)



Level 10に達してやっと初期の主人公レベルになった。そしてこの3日間親が俺を探すこともなく、知人にも会っていないので恐らく巣立った後にこの街に来て頭を打って魂が俺と入れ替わったと考えるのが妥当だろう。


まぁ木の実が欲しくなったらまた探せばいいから食料面においては心配事はない。

だがまともな武器や防具が揃わないといつまたブラックウルフに襲われるかわからないからな。


「よし、冒険者登録するか!」






–冒険者ギルド–


ここは数々の冒険者が集う冒険者ギルド。

冒険者登録を始め、昇格試験、依頼や依頼の遂行などを行える場所である。街に1つは置いてある。



「こんにちは、今日はどう言ったご用件でしょうか」


「冒険者登録をしたいのですが」


「畏まりました。その前に冒険者や依頼の受注についての説明は聞きますか?」


「いえ、大体理解しているので大丈夫です」


「では『鑑定』をさせていただくにあたってこの鑑定石に手をかざしてもらえませんか?」


鑑定石はスキル『鑑定』(ステータスをより細かに分析するスキル)を使わずとも相手のステータスを見ることが出来る物。これで冒険者ランクをAからFのどこから始めるかを決めてもらう。


ちなみにA級の上である「S」、Sでも収まりきらない技量の持ち主に送られる称号である『X』級もある。

この2つは始めからなることは不可能で、国や世界への功績を残さなければならない。


「終了です、貴方はEランクからのスタートですね。依頼の掲示板はあちらにありますので依頼の用紙を掲示板から取ってもらい受付に持ってきてください。なお、右上にXからFの記号が振られているので自分の冒険者ランク以下なものしか受注できませんのでご了承ください」


「了解です。ありがとうございました」


まさかE級から始められるとは、このステータスならFだと思ったのだが、何か良い情報でもステータスに書いてあったのかもしれないな。



掲示板には数百枚の紙が貼られている。物語序盤だから平和だし、あってもAランクのクエストだけだよな。


アカネ村付近のゴブリン10体討伐、これにするか。




「ゴブリンなら素手でいけるか〜」


「おぉ!兄ちゃん、初日から魔物討伐なんてガッツあるねぇ!しかも素手か!がーはっはっ」


この人は始まるの街で冒険者登録をすると必ず話しかけてくる人。特に有益な情報はくれないがそこそこ強いのでたまに助けてくれる。


「おっと自己紹介がまだだったな!俺の名前はガジル=エフォーツ=ドライドだ。ガジルでいいぜ!ちなみにBランク冒険者だ!」


「レオン=グラーヴ=シドラです。」


握手をしようと言わんばかりに手を差し出してくる。応じると骨が逝きかけるのを知っている俺は気にせず話す。


「もしお前がBランクに上がったら一緒に酒でも飲もうぜ!そして仲間として歓迎してやる!」


これが伏線となって、Bランクになり始まりの街に戻るとクエストが始まることはまた別の話。







冒険者ギルドを出た後もずっとガジルさんは話し続けていた。ありがた迷惑とはこのことだな…


グイッ


「ん?」


「あ、あ、あの!」


服が引っ張られた気がして後ろを見ると3日前に助けた(?)獣人の少女が立っていた。


「改めまして、先日はどうもありがとうございました!」


「あー、俺大したことしてないけど無事で良かったよ。」


なんで俺のいる場所がわかったのだろうか、まぁ近くの街で探してくれたのだろう


「それで、お礼をしたくて…」


「そんなの全然いいよ、さっきも言ったけど俺ほんとに大したことしてないから」


「謙遜なんて…ブラックウルフ3体を倒すなんて大人の獣人でも手がかかるのに」


いやだから騎士団がやったって言ってるのに!!


「それより君はなんであの森にいたの?」


獣人はストーリー序盤に出てくる種族じゃないはず…


「実は私が住んでいた集落が魔王軍からの侵略を受けて、両親とはぐれて、逃げ回った結果安全な森に着いたのです。結局そこもブラックウルフがいて…」


大人の獣人であればそこらの魔物も倒せるが、この歳であれば仕方ないことだな。にしても獣人は体力が凄いな。何百km走ったのだろうか


「大変だったな、もうあの森にはあそこまで強い魔物は出ないだろうし、もし怖いのならばこの街に住むのも悪くないと思うぞ」


「そうですね、、でも私は決めたのです!貴方様についていくことを!」


うん、迷惑


「もしあの一件で恩を感じたのなら俺は十分感謝の念が伝わったから結構だよ。お金が無いのだとしたら俺も一文なしなのでな。すまないが他を当たってくれ」


「私の心配はしなくて良いのです!貴方様に忠義を誓うことを決めたのです!」


そう言われてもなぁ…


「雑用でもなんでもしますから!お願いします!」


そして獣人の少女はその場で土下座をし始めた


「お、おい!?」


ざわざわ


「どうした?あの青年がいきなり獣人に土下座させてるぞ…」


「最低ね、まだ若いのに…」


変な勘違いされてるし!!


「顔を上げてくれ!俺がこの街から追放されてしまう!」


「貴方様のお近くに居させてもらえないのであればこのままこの体勢でいさせていただきます!」


めんどくせぇぇぇぇぇ


「はぁ…わかったからとりあえず着いてきてくれ」


ぱぁっ


「はい!」


獣人の女は顔を明るくしてトコトコと俺の後ろをついてきた。よく見るとかなり服も汚れていて痩せ細ってしまっている。







–始まりの街、とある空き家–


「ここは最近俺が寝床として利用してる場所だ。」


「ここがご主人様のお家、、」


「ご主人様…?」


「はい!ご主人様です!これから仕える偉大なお方なので!」


「俺はレオン=グラーヴ=シドラだ。レオンって呼べばいい」


「レオン様ですね!なんて素晴らしいお名前!」


転生早々、厄介な奴に絡まれたなこりゃ…


「お前の名前はなんでいうんだ?」


「ヘルムです!」


「そうかヘルム、さっきも言ったが、俺は恩を着せようとお前を助けたわけじゃ無い。忠義を誓う必要なんて無いんだぞ」


「優しいお方…ですがこれは私が決めたことですので!それよりヘルム様は何を目的に冒険者に?」


こいつ…!何がなんでも俺のとってきた資源を奪う気なのか!こんな善意でついていくわけがない!絶対裏がある…

やばい奴を装って遠ざける作戦で行こう


「ふむ、俺は惑星支配を目論む悪の権化になろうと考えているのだ」


どうだ、もう魔王と同じようなことを言うことで半歩引くこと間違いなしだ


「素晴らしい…!なんて素晴らしいお考え!」


「え?」


「感服いたしました、私の命が尽きるまでお供します。」


「えぇぇぇー!!いや、いいって!ほんとに死ぬよ!すぐ死ぬよ!」


「はい!レオン様に救われたこの命、レオン様のために使わせていただきます!」


そう言ってヘルムは片膝をつき頭を垂れた。



転生から3日目にして意味のわからない思想の獣人の少女が仲間になった。


これがこのモブ男の転機だとも知らずに、、


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