第52話
【永遠のラスボス】デュラハンを美味しく食べる方法を考える雑談配信
"枠名ェ・・・"
"また喰いに行くんか(困惑)"
"出落ちすぎるw"
"いったい何が始まるんですかねえ..."
とある日の放課後。
「今日も食卓から、癒やしをお届け。食材のみなさん、こんにちは~!」
今日は、雑談配信の日だ。
私はアプリのスイッチを入れ、部屋でゆる~く配信を始める。
"こんレイナ~"
"モンスターにとってのラスボスはレイナちゃん"
"デュラハンの食べ方――やっぱり丸齧り?"
「それはもうやりました」
"草"
"そういえばそうだった・・・"
前回の配信で、大敗北を喫してからというもの。
私は、真剣に、それはもう真剣に、デュラハンを美味しく食べる方法を考えていたのだ。
しかし一向に良い方法は浮かばず。
こうして雑談配信で、アイディアを募ろうと思ったわけだ。
"フグ刺しを盛り付ける"
"お味噌汁の出汁にする"
"デュラハンを何かに食べさせて、それをレイナちゃんが食べる?"
"粉々に砕いてふりかけにする"
"マナ溜まり煮"
「ふわっ!? みなさん天才ですか!?」
続々と書き込まれるアイディアに、私は目を丸くする。
たくさんの人が集まる配信は、まさに集合知。
私だけでは考えつかなかったようなアイディアが、どんどん出てくるのだ。
特にマナ溜まり煮。
うまくいけば、マナ酔いも中和できて一石二鳥かもしれない。
私が、ワクワクそんなことを考えていると――
"《鈴木 千佳》実はな、エリクシアさんからこんな提案が――"
「わ~!? また爆破しちゃってごめんなさい!!」
反射的に謝り倒す私。
せっかくもらった案件配信。そこで宣伝するべきものを、またしても爆破してしまうとは大失態である。
"ラクラク・ハコベールの反響えぐかったよね"
"あれ、俺も欲しい"
"でもお高いんでしょう?"
"ちょと高価なマンションが買えるぐらいやね"
"中流探索者が1年頑張れば手に入るぐらいか・・・?"
「やらかした~!?」と慌てる私をよそに、エリクシアの社長さんは「最高の宣伝になった!」なんてガッツポーズしてたっけ。
社長は恰幅の良い優しそうなおじさんで、理念は面白ければ何でもヨシ。
打ち合わせでは、もっとバーサクレイナちゃんが見たいなんて熱いリクエストまでしてくる愉快な人だ。
(それは、謹んでお断りさせて頂いたわけだけど……!)
"《鈴木 千佳》エリクシアさんの中で、デュラハン料理の開発部署を作ろうなんて動きが出てるみたいでな"
"《鈴木 千佳》レイナちゃんにも協力を仰ぎたいなんて話が――"
"さすがに狂気"
"【悲報】エリクシアさん、たいがい頭がおかしい"
"既知やぞ"
"デュラハンなんて喰えるはずがないだろ、いい加減にしろ!"
"《英検1級はクソゲー》ぶわっ(´;ω;`)"
"自ら泣きに行くのか・・・(困惑)"
「はいはい! もちろん協力します!」
断る理由はない。
私は、両手を上げて参加表明。
"《鈴木 千佳》よし来た! それで早速なんやけど、依頼内容としてはな――"
"《鈴木 千佳》デュラハンを調理できるような頑丈な素材を探してるらしいんやけどな……。何か心当たりある?"
「え~っと……、ヘルプ! 食材さん!!」
心当たりなど、あるはずもない。
秒で諦め、私は華麗に頼れるリスナーさんにバトンタッチ。
"レイナちゃんは食べれないものには興味ないゾ"
"キラーパスすぎるw"
"デュラハンを料理できる素材――えーっと・・・英検さん、パスッ!"
"《英検1級はクソゲー》なんでやっ(´;ω;`)"
そんな雑談のノリだったが、さすがは叡智の集合体、こと食材さんたちである。
すぐに様々なアイディアが、書き込まれることになる。
"深層の壁とか使える?"
"↑↑パンチで穴開くから、デュラハンよりは貧弱そう"
"ならあれは? 鉱石スライムが腹の中に溜め込んでる石っころ"
"マグマに沈めると普通に溶けちゃうから駄目"
"要求ハードル高すぎぃ!"
どうにも「これだ!」という結論には至らず。
その時、私は見覚えのあるハンドルネームによる書き込みを見つけ出す。
"《マイン》私の地元の鉱山洞窟。深層の岩石はなかなか頑丈。是非に(英語)"
"《英検1級はクソゲー》なんかアメリカの鉱山洞窟がおすすめらしいよ(´;ω;`)"
"マインちゃんだ!"
"この配信、ポンとやばい人が書き込むから好き"
「マインちゃんだ!? 今日はサインは描きませんよ!」
"《マイン》残念・・・"
マインというのは、以前のアタックで一緒になったアメリカの探索者だ。呪術師であり、私のサインに触媒としての効能を見出していたりする━━大変に遺憾である。
「食材さん! 鉱山洞窟にある岩石って、どうだと思いますか?」
"うーん、まだまだ硬さが足りないと思う"
"デュラハンを上回る硬さを持った素材かぁ"
"もう最前線さらに突き進むしか!"
"↑↑この子はほんとにやりかねんからヤメレ!?"
「デュラハンより硬いもの……。
うーん、うーん? ……あっ! パンドラボックスの牙とかどうですか!?」
ポンと手を叩く私。
何を隠そう、最初に食べた時にまとったオーラである。
「でも……、パンドラボックスって、なかなか見つからないんですよね」
素材を集めるなら、集めやすさも大事だと思う。
手軽で集めやすく、それでいてデュラハンを料理できるぐらいに頑丈で、私が見たことがある相手?
「あ! デュラハン持ち帰りますか!」
"草"
"あっじゃないんだよなw"
"天才"
"【朗報】デュラハンくん、初めて素材として利用される"
"↑↑料理器具に使われるのは本人も予想外でしょw"
「どれぐらい必要なんですかね?」
ラクラク・ハコベールを手にした私は、まさに無敵。
食べきれないモンスターを手にしても、全部、持ち運ぶことができるのだ!
"アカン、この子周回するつもりだw"
"デュラハンくん、超逃げて!?"
"いっそレア個体湧くまで粘ろう"
"↑↑ひっでぇ無茶振りを見た"
「分かりました!!」
"""・・・・えっ?"""
(思わぬところで、次回の配信ネタまで出来ちゃった!)
(やっぱり雑談配信も楽しいな~)
私は次回の配信を楽しみに、スマホの電源を切るのだった。
===
新作の投稿を始めました〜!
煽り系エセお嬢様が、配信切り忘れてバズってしまうお話です!
煽り系ダンジョン配信者、視聴者を煽るたびに強くなるので、無理して煽り散らかしてみるも、配信を切り忘れたままひとり反省会をしてしまいバズってしまう
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます