ムーンライトカーニバル

御月

日記に残す恋心

 文才なんか無ぇ。作文は嫌いだ。

 だが、今日の出来事は忘れたくなかった。恥ずかしい話、運命の女と出会った初日の出来事だ。絶対に忘れたくない。


 まだ日を跨ぐ前──直前くらい、か? 駅ビルの大型書店から帰宅途中だった。

 半社畜だから、どうしても帰りは遅い。この時間でも利用できる書店の存在は御の字で……活字中毒なんだよ。悪かったな、作文は嫌いだが、読むのは好きなんだ。


 平積みの中から本を1冊購入し、家路を急ぐ。

 急ぐ理由は、本が早く読みたい……まぁ、無い訳では無いけど理由としちゃぁ弱い。

 正解は『雑多な霊に追いかけられるから』だ。知ってるか? 本屋って色々な霊の宝庫なんだぜ? そんでもって、俺は所謂『視える人』で『交われる人』なんだわ、不本意ながら。

 振り返れば奴らが居るんだなぁ、ご機嫌な奴らが。今日も大漁だ、水揚げは無ぇけど。

 何だか訳わからんぐちゃぐちゃした集合体や……ちょっと待てや、お前は千葉の夢の国に帰れや!って言いたくなるぬいぐるみの群れ。エレクト○カルパレードじゃねぇんだぞ? むしろ気分は百鬼夜行だっての。

 うん? この音は……あぁ、そろそろか。聞こえてきた重低音に横を向くと、悪鬼羅刹を体現した大男と、メリハリのあるボディースーツが艶かしい女に挟まれた。

 片手を上げて、挨拶してくる女なんだけど、首から上が無ぇんだよ。いい体してんだけどなぁ。

 あん?乗ってけ、じゃねぇよ!?

 えっ?じゃ無ぇよ! そんでもってガッカリすんなっ! 一度も乗ったこと無ぇよな?

 鬼の兄ちゃんもイラッとしてんじゃねぇ。むしろそこの頭長爺を乗せてやれって!

 あん?爺、焼き鳥くれんのか? ……ありがたくいただくわ。食いもんに罪はねぇ──旨い!

 月下の焼き鳥とか最高じゃね? 夜桜もきれいだしよ。


「やっぱ俺に文才無いわ。日記帳何ページ埋める気だよ、俺!? しかもまだ女出てこねぇし! 首無しライダーは出たけどよ?」







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