ひろえ! 拾え!
あかつき らいる
ひろえ! 拾え!!
今日の夜空には「幸運の月」が上っている。それを見るために深夜の散歩へ出た。
少し肌寒く感じる。昼間は20℃もあったので、その放射冷却現象で気温が下がったためだろうか。
先週は、春の嵐で「春一番」という南風が吹いたかと思うと、翌日は雷雨だったりした。長袖に長ズボン、反射ベルトを斜め掛けにして、背中にはリュックサック、手には懐中電灯。
いつもの散歩コースも昼と夜とでは雰囲気も違った。近所は畑ばかりで、街灯はポツンと3ヶ所のみ。家はあるけれど明かりは消えているから就寝しているのだろう。
田畑が広がる、そのど真ん中にオレンジ色の街灯と、バス停とアルミ製のベンチ、それと自動販売機が一つある。その自動販売機は「先週の雷雨で雷が落ちました」というローカルニュースになった。
なんとなく好奇心が沸いて、その方向へ行くと何やらにぎやかだ。オレンジ色の街灯の下でなにやら拾っているような人たちがいた。
「こんばんは。よいお月さまですね」
「これはどうも。あんたも拾いに来たのかえ?」
「ところで皆さんは、何を拾っておられるので?」
「ちっちゃなお月さまー」
「お月さま?」
はて? お月さまは夜空にあるのにな、と思いながらも気になって立ち止まった。
その時、突然、光はじめる。ぼんやり光る自動販売機に集まっていた人たちが柏手を2回うつ。そして自動販売機に向かってお辞儀をして、地面を見ていた。
ぽ、ぽぽん、ぽんぽん、ぽ、ぽ、ぽ、ぽ……
自動販売機の光がはじけ散る。なにか、ひらぺったい何かが落ちている。足元にも転がってきたので、拾い上げてみた。それは500円玉ぐらいの小さなお月さまだった。
「そーれ。祭りじゃ、祭りじゃ。拾え! 拾えー!!」
「これをどうするんですか?」
「知らんのかの。×××に使うんじゃよ」
聞き取れずに振り返るとシーンとしていた。自動販売機が佇んでいる。
そこで体が揺れ、目が覚めた。
ひろえ! 拾え! あかつき らいる @yunaki19-rairu
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