第4話 一角
3階に行く途中何やらおいしそうな匂いがしてきた。何かおいしいものが食べられる予感がしてブッコローは少しワクワクしてきた。3階に着くとそこは“新しい一角”の景色が広がっていた
「なにこれ」
一角の真ん中に大きな洗い場がポツンとあり、それを囲むように机やテーブルが円形に並べられていた。
「一角の名物店員、問仁田さんの皿洗い姿を360度から見れるセットになってます」
「だれがそんなもの見るのよって思ったけど、問仁田さん人気があるしなぁ」
「いらっしゃいませ。3名様ですか?」
元気な声で問仁田さんが出迎えてくれた。いつもより明るい表情で心なしか嬉しそうに見えた
「問仁田人気もここまで来ましたか」
「いやー、お恥ずかしい」
「本業より楽しそうじゃないですか。職種変えたら?」
「もー、あんまりイジメないで下さいよぁ。じゃあ、こちらへどうぞ」
そう言いながら、洗い場のど真ん前の席を案内してくれた。
「一角ステージは食事とクイズと問仁田さんを楽しむステージとなっています」
「今、部屋とYシャツと私って思ったでしょ。それ、中年しか伝わらないネタだからね」
「思わねーよ」
pの鋭い突っ込みにブッコローはドキッとしてしまった。図星な上に中年と言われ小さく傷ついてしまった
「このステージは問仁田さんと長谷部さんが担当します。クイズは出された料理に隠された何かを食べて当ててもらいます」
「味覚クイズ?それ大丈夫なやつですか?」
「わかりやすいものを入れているから難しくないと思いますけど」
「違うよ郁さん。この人、ビビりだから食えないものを食わされるんじゃないかと思っているんですよ。大丈夫、ちゃんと食べ物だし。それ、あなた食べたことあるし」
「食べたことある?何それ?」
「クイズだからこれ以上は言わない」
一抹の不安を抱いていたら元気な声と共に長谷部さんがハンバーガーを手にやって来た
「お待たせしました。オートミールのハンバーガーになります」
「久々ですねぇ、長谷部さん」
「お久しぶりです。会えなかった分YouTubeを見ていますよ」
「うわー、知らない間にそんな接客トークするようになったんですか。でも、忖度しませんよ」
「もちろんです。召し上がって下さい」
「いただきまーす」
ズシっと重いハンバーガーを一口かぶりついた。口の中で具に練り込まれたであろう固くて小さいカケラを感じた。おそらくコレが答えなんだろうとは思うがコレが何なのかまではわからない
「・・・・・何かの燻製?」
「燻製ではないんですがいい線行ってますよ。もうちょっと食べてみてください」
一口、二口と食べ進めて行くうちボリッという音が口の中から聞こえた。どうやら大きなカケラを噛んだようである。噛み締めて行くうちにコレの正体が分かったが嬉しくない。ブッコローはガッカリにも似たため息をついてしまった
「・・・コレかぁ」
「わかったようだな。YouTubeで結構いじっていたから問題に入れてみた」
「社内の打ち合わせでもゆうせかっぽい問題だねってみんな言ってましたよ」
「乾いたたくあんをハンバーガーに入れないでくださいって会議で言っといて下さい」
「わかりました。再検討事項で」
そう言って手元の資料に赤ペンで記入した。洗い場から間仁田さんが何かを手にやってきた
「ステージクリアなのでアイテムをどうぞ」
そう言って間仁田はクリーム色のキュリアスIRを渡した。
「キュリアスちゃんゲットかぁ。ちなみに値段は覚えてます?」
「・・・・感謝祭なんでプライスレスでいいですか?」
訳のわからない答えが返ってきた。本当にバイヤーなんだろうか?と呆れてしまった
「じゃあ、次に行っちゃいますか」
階段に向かおうとするとpに呼び止められた
「あーそっちじゃないよ。ここからはエレベーターで行く」
なんでエレベーター?と思った次の瞬間、蛇腹の古いエレベーターに乗った時の感覚が蘇った
「上の階だし階段でいいよ」
「大将戦だし特別感を出すためにはうってつけでしょ?アトラクションとしてやったらいいんじゃないってあなた言ってたじゃん」
「ワクワクドキドキは大事ですからね」
エレベーターに向かう2人の後をトボトボと歩くブッコロー。またあれに乗るのかと思うと早くも手汗をかいてしまった
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