5月22日①:それ、将来的に俺へ還元されないか?

今日もまた朝を迎える

カーテンを開けて、部屋の中に日光を取り込んだ

今日はちょっと暑いな。中間服でもしんどいだろうか

ふと、衣服かけにかけられている半袖の制服が目に入る


衣替えの時期で半袖も一応認められているが・・・

もう少しだけ、羽依里とおそろいなカーディガンを着込んでいたい

今日が多少暑くなりそうな日でも、もう少しだけ一緒でいたいんだ


背伸びをして、身体を起こす

それから壁にかけられたカレンダーを見て、今日の予定を確認しておく


「今日の予定は・・・っと」


今日は廉を連れて華道部、美術部、そして文芸部の部活記録だ

ふと、窓の外を見ると椿さんが店の前を掃除していた

帰ってきているのは珍しいな・・・

せっかくだ。今のうちに挨拶をしておくか

俺は急いで身支度を整える


「悠真。おはよう。まだお父さんが終わっていないから・・・」

「おはよう、母さん。今は椿さんに挨拶を。今日は世話になるから」

「あ、なるほど。じゃあまた後でね」

「うん。お願い」


流石に寝癖だらけなのは椿さんの前で失礼だし、みっともない

軽く整えた後、俺は店を経由して外に出る

そして、店の前を掃除していた穂月椿へ声をかけた


「椿さん」

「あら、悠真君?久しぶりね」

「お久しぶりです。今日はお話、入っていますよね」

「ええ。今日はよろしくね」

「こちらこそ。今日は三人で伺う予定です」


「今日は誰が来るのかしら。藤乃?」

「いえ、藤乃は残念ながら・・・」

「そう。そうよね。あの子は流石に嫌か。じゃあ、悠真君と後は誰が・・・」

「それは後のお楽しみと言うことで」

「と、いうことは尚介君と絵莉ちゃんではないのね」


ふと、椿さんの後ろに視線を向けると制服に着替えた藤乃がそこにいた

藤乃はすすすっと椿さんの背後を動き、急いで学校に向かう

どれだけ椿さんのことが嫌いなんだ、藤乃よ


「そ、そうですよ。誰が来るのか、楽しみにしておいてくださいね」

「ええ。じゃあ、また後で」

「はい。また後で」


その姿を見守った後、椿さんと別れて家に戻る

それから俺は寝癖を整えて貰い、いつも通りの朝を過ごした


・・


朝の流れを一通り終えて、俺と羽依里は学校へ向かう


「へぇ。今日は藤乃ちゃん、もう学校に行っているんだ」

「ああ。椿さんがいる日はいつもこうなんだ」


まあ、何をするわけでもなくのんびりしているか、朝が早い部活の面々に捕獲されて、何か手伝わされているかの二択だ

そんなことも、藤乃にとっては椿さんと一緒にいるよりマシなのだろう


「椿さんっていうのは、藤乃ちゃんのお母さん?」

「ああ。今朝、見なかったか?」

「私が起きてきた時にはもう外には誰もいなかったから」


じゃあ、羽依里は勿論廉も今日が椿さんと初対面になるわけか

紹介、ちゃんとしないとな


「そうか。ところでさ、羽依里」

「なぁに、悠真」

「羽依里は、何か欲しいものがあったりするか?」

「急にどうしたの?」

「あ、いや。昨日のサボテンを見てさ、俺は羽依里に何か贈り物とかしていないなと思いまして・・・だから、なにか贈りたいなと思いまして」

「んー・・・そういうのはあまり気にしなくていいと思うよ。悠真の負担にもなるだろうし」

「俺としては、恋人らしいことしたいんですよ。羽依里さんや」

「そ、そうなんだ・・・じゃあ、毛糸で」

「それ、将来的に俺へ還元されないか?」

「される予定。今も、作りかけのものがあって。他にも冬前にプレゼントできたらなって思っているものがあるから」

「それは嬉しい。超待ってる。毛糸、足りなかったら言ってくれ。荷物持ちに付き合うから」


羽依里の手編みセーターとかマフラーとか、今年も期待していいらしい

最高すぎる。着心地はいいし、暖かいし、沢山作ってくれるから普段使いし放題なんだよな、あれ


「ありがとう。頑張るね。でも、それは私が普段使うものじゃないよね・・・」

「できれば、羽依里が普段使いしたりするものでお願いしたいところ」

「んー・・・普段使い。色々と考えるけれど、今すぐこう、ピンとくるものがないかな」

「そっか」

「悠真が私のことをしっかり考えて、プレゼントを贈ってほしいというのはアリ?」

「俺、センスがないからな・・・」

「それでもいいよ。私は悠真が私の事を考えて買って、贈ってくれたってことが一番だから」

「そっか。じゃあ、少し考えてみるよ」

「うん。私も、考えておくね」

「え」

「え?」


ふと、素っ頓狂な声が出てしまう

だって、贈り物をするのは俺だけで・・・


「なに驚いているの?悠真がくれるなら、私も何か贈るよ?」

「え、でも、いや・・・」

「悠真だけに贈って貰ってばかりじゃ悪いでしょう?私だって日頃のお礼とか色々な気持ちを込めて贈り物をしたいから」

「俺の方が貰っているのに」

「一緒ぐらいだよ。でも、絶対私の方が悠真から色々なものを貰っているから」

「いや、俺の方が貰っている」

「違う、私の方!」


変な事で言い争いつつ、互いに贈り物をし合う約束を羽依里と交わした

一応、期限も設けておいた

少し長いけれど、一学期終了まで

終業式の日に、送り合うという取り決めをしておく


それから俺たちは今日の予定を確認しつつ、朝の時間を過ごしていく

今日もまた、忙しくなる

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