深夜の散歩で起きた出来事は銀ラメ服を着た緑ツインテの子がいたこと

一陽吉

ふだんと違うことをすると変わったことが起きる

 現在、午前二時。


 いわゆる丑三つ時だね。


 こんな時間だから住宅地に住む人たちは夢の中でとても静か。


 だから、こうして歩く小さな足音もよく聞こえる。


 散歩自体はいつもやっているけど、今日は時間をずらしてみた。


 何か違うものが見えてくるのかなと思ってね。


 出会いでもいいな。


 変態でも幽霊でも宇宙人でも、何でもオッケー。


 とにかく、いつもと違う感覚をあじわいたい。


 ──うん?


 公園に女の子がいる。


 ここはけっこう広い公園で遊具なんかも十五台くらいあるのよね。


 そのど真ん中に十歳くらいの女の子がいる。


 しかも、銀ラメのワンピースを着て、腰までとどく緑の髪をツインテールにしてるし、鈍く光ってるわ。


 これはとても興味深い!


 声をかけてみよう。


「こんばんわー」


 ちょっと陽気に挨拶すると、彼女は顔をこっちへ向けた。


 クールな雰囲気ね。


「私はミキコ。あなたは?」


「名まえ? わたしは、ルナよ」


「ルナちゃんかー。真っ暗なこの時間に一人でどうしたの? お父さんやお母さんは?」


「わたしを作ったもの? マザーよ。ファザーに相当するものはない」


「へえ、そうなんだ。じゃあルナちゃんはどこから来たの?」


「こことは違う世界」


「こことは違うってことは異星人なのかな? それとも違う宇宙から?」


「……、答えたくない」


「そっかー、うんうん、いいよ。答えたくないなら答えなくても。でも、目的があってこの世界に来てるんでしょう? できればそれを教えてほしいな」


「目的は、調査。そして、あなたの作りがおもしろい」


「じっと見てると思ったら、私を調べてたのね。どう? 私ってセクシー?」


「あなた、生命体ではない。そして、動力源が未知の力。わたしの世界にないもの。これは、回収の必要がある」


「あら? この白い光の輪で私を拘束して連れて帰るつもり?」


「そう。そのエネルギーを詳しく解析したい」


 ということはルナちゃんの世界には魔力が無いのね。


 つまり、魔法ではなく科学が進んだ世界なんだ。


 そういう世界とか見てみたい気もするけど、おそらく途切れちゃうし、私の技術も分析されるわね。


 もっとお話ししたかったけど、ここまで。


 散!


 衣服だけを残して身体は全て粒子になってから消えたわ。


 ──そして、ゴーグルはもういいわね。


 ふ~~。


 義体が回収されそうになったけど、とてもおもしろかった。


 ルナちゃんは可愛かったし、想像以上に深夜の散歩って楽しいわ。


 またやろう。


 襲われても義体だから、私には影響ない。


 それに壊れたら直して、奪われそうなったら消せばばいいんだもん。


 数だって、シンクロ操作の義体はまだまだたくさんある。


 二十歳の天才魔導工学士であるこの加藤魅機子カトウミキコが作ったものがね。

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深夜の散歩で起きた出来事は銀ラメ服を着た緑ツインテの子がいたこと 一陽吉 @ninomae_youkich

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