真夜中(777文字版)

Azu Kian

第0.1話「お忍びの散策」改

 何とはなしにつけないでいると不用な思いが頭に浮かぶ。どうせ考え事をするのならば残務ざんむでもと端末に接続するが、こういう時に限って新たな案件もなし。


 気まぐれに世情せじょうでもながめてみるかと公共ネットに出て気分のままに流されて行くと、水中に殿舎でんしゃが見えてきた。


 その深みから話し声がただよつたわってくる。どれどれ・・・。


 2Q「あの子なんだか悩みがあるようなんですが」

 2A「アナタの見る目を信じなさい悩みも僥倖ぎょうこうとなるでしょう」

 ありきたりな人生相談のようにも、ありがたい神託しんたくごとくにも聞こえるの。まあ次を見てみるか。



 5Q「主人の技量が理論を超えているのです」

 5A「アナタの能力をささげなさい理論の先にいたるでしょう」

 有能な主人につかえられるとは果報かほうものではないかな。その主人とやらが艦隊司令なら会ってみるのも良いかもしれん。



 6Q「食事にあまり関心がもてません」

 6A「アナタ自身をいつくしみなさい食事は高嶺たかねをもたらすでしょう」

 奇遇きぐうよのう、食わぬから伸びんとは聞ききたわ。誰か何ぞ良い物を献上けんじょうしてこぬものか。



 7Q「助けになりたいと思うのは不相応ふそうおうでしょうか」

 7A「アナタは務めに従いなさい助けはともにあることでしょう」

 よいぞよいぞ、殊勝しゅしょうな心掛けの者よのう。褒美ほうびに宇宙戦艦などつかわしてやりたい話よ。



 8Q「あの星には存在したのです確かな証拠しょうこもここに」

 8A「アナタの執念しゅうねんや良し。かの星には大いなるけものがおりましたが、それは地上を燃やしつくし自らもほろぼしたのです」


「ありがたい言葉いただき感激ギフト!いたしました」

「アナタのギフトに感謝かんしゃを」

 この様な市井しせいの営みを見聞けんぶんしたかったのだ。下々しもじもの世には変わった風習があるものよ、有意義な体験になったわい。



 9Q「秘密を守るには、どうすれば?」

 9A「忘れなさい」

 雑じゃの。


 むむ、もうこんな刻限こくげんではないか。執務しつむさわりがあってもいかん。

 散策さんさくを切り上げて眠りに戻ることにした。

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