冷酷非道な緑の悪魔め! お前たちに今日を生きる資格はない!
とあるワイドショー番組による街頭インタビュー。スギ花粉への怒りの声。
〇リクルートスーツ姿の二十代女性
「選考落ちたスギ花粉死ね!」
〇駄菓子屋の前で棒付きキャンディを舐めている小学二年生男子
「スギ花粉症もうヤダ! 超ウルトラスーパー光線でやっつけたい!」
〇畑で農作業中の五十代男性
「俺がメタボなのも五十肩なのも髪の毛薄くなってきたのも腰が痛いのも酒タバコがやめられないのも馬券外すのも息子に女っ気がなくて孫を抱っこできなさそうなのも全部全部ぜーんぶスギ花粉のせいだ! ぜってぇに許さねぇ!」
〇「スギ死ね死ね団」と書かれた旗を掲げる大学生男子
「死ね死ね消えろスギ林! お前の居場所はどこにもねえ! 切られ燃やされあの世行き! いずれ行くのは血の池地獄! 報いを受けろゴートゥーヘル!」
*****
機械仕掛けの与作が各地でスギを切り倒している間に、スギ滅会は別の作戦も進めていた。
スギ滅会の中には、元自衛隊幹部、防衛省OB、外務省OBなども在籍している。彼らは持てる人脈を活かして、方々に働きかけた。働きかけの目的は、自衛隊と在日米軍を動かすことだ。彼らの協力さえあれば、今シーズン中にスギ林を完膚なきまでに打ちのめし、この地上から葬り去ることができる。そうした確信が、スギ滅会の中にはあった。
そんな活動の甲斐あって、とうとうスギ滅会待望の作戦が実現する。自衛隊と在日米軍が、スギ林焼却のために動いてくれたのだ。
スギ林VS自衛隊&アメリカ軍。ドリームマッチのゴングが打ち鳴らされた、陸上からは陸上自衛隊野戦特科の
作戦地点へ到達した野戦特科は、各種榴弾砲によってドンドコドンドコと砲撃を行った。直立不動のスギ林は、降り注ぐ砲弾を無抵抗で受け続けた。爆風が枝葉を吹き飛ばし、燃え立つ炎が幹を焼き焦がす。
スギ林への攻撃は、陸からだけではない。上空からは爆装したF-2支援戦闘機が、緑の悪魔を討つべく対地攻撃を行った。落とされた爆弾がスギ林で爆ぜ、赤い炎が緑の葉を、赤褐色の幹を舐めつくしていく。
一方のアメリカ軍も、負けじと兵器を繰り出した。「
米空軍の誇るこれら三種の戦略爆撃機は、いずれもF-2支援戦闘機とは比べ物にならない爆弾積載量を誇っている。それによって、一度の出撃でより広い面積のスギ林を焼き払うことが可能だ。
戦略爆撃機による情け容赦ない爆撃が、悪逆の林を焦土に変えていく。斜面を覆う一面の緑が、炎の赤と煙の黒に塗りつぶされる。地を震わせる轟音は、緑の悪魔の断末魔か、それとも非道に苦しむ無辜の民の歓喜なのか。
ロングホーンによる伐採と、自衛隊米軍共同の焼却作戦。双方が並行して進められ、非道の権化たるスギ林は徐々にその勢力を削られていった。
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