第17話
「陛下、本日は王妃の役目である令嬢達を集めたお茶会となっております」
「えぇ、そうね。気が重いわっ」
執事の仕事が板についてきたロダの言葉。早朝から執務をこなし、朝食後にイヤイヤながら侍女達が私を連れに来た。
「陛下、いってらっしゃーい☆後のことは私達にまっかせてっね♪」
ナーヤは嬉しそうにそう話す。
「くっ。お、お前が行けばいいわっ!そうよ、そうよ!私の代わりに側近が出ればいいのですっ!!」
私はそう言うけれど、イクセルもミカルもフッと笑うばかり。
「だってぇ~変わってあげたいわよぉ?でもぉ、陛下のぉ仕事だしぃ?頑張って?」
「うぅ、ロダ。ナーヤが冷たいわっ」
「こればかりは仕方がありません。今日のお茶会は若い令嬢達を集めたお茶会です。さぁ、油を売っている暇はありません。マヤが待っています」
「いってらっしゃぁぃ♪」
ナーヤが手を振って私を見送った。行きたくないわ。派閥が無いお茶会は派閥同士で荒れる事もあり、主催者の力量が問われるのよね。情報収集のためとはいえやりたくないわ。
私はゲンナリしながら侍女達にお茶会の準備をしてもらう。
――そうそう、クレアよ、公の場では特に女王としての貫禄をつけるためにも言葉遣いを気をつけろ。いつまでも王女ではいられぬからな。
うぅ、そうですね。少しずつ改めていきます。
今日は中庭で行われる予定のお茶会。ドレスを着て化粧をしていざ会場へ。
「クレア陛下が来られましたわ」誰かがそう口にすると、一斉に会話が止まり視線が私へと集まる。令嬢達を見回してみると違和感に気づいた。一人の令嬢がどこか怯えているような、不安そうな顔をしている。
何かあったのかしら。
令嬢達はすぐさま私の前へと列をなし、挨拶をしていく。そうして先ほど怯えていた令嬢が私の前へと順番がきたようだ。
「カランデリオ・ソフマンが娘。マレナと申します。今日のお茶会に出席出来た事を恐悦至極に存じます」
「マレナ嬢、今日は歳の近い令嬢達の集まりです。楽しんで下さいね」
私が微笑むとマレナ嬢はカーテンシーの後、席へと戻っていく。幾分かは顔色が戻ったような気がするけれど、緊張していたわね。こればかりは仕方がない。
子爵位にとって普段は王族と接する機会はないのだもの。
そうして令嬢達とのお茶会が開始となった。私はにこやかに聞き役となりその場にいる令嬢達の話題が円滑に進むように話を振る。令嬢達の話題と言えば、お化粧から始まり、流行のドレス、装飾品や婚約者の話が代わる代わる出てくる。話題は尽きる事はないようだ。
婚約者のいない殿方の話題が出た時は騎士団で活躍する騎士の名が数名出ていた。やはり騎士は人気なのね。
その中でもアスター・コール様は令嬢達の中で人気なのだとか。
騎士団の訓練場に見学に行くといつもアスター様は真剣に訓練に取り組んでいるのだとか。令嬢たちの歓声に照れながら手を挙げて応えてくれる姿がまた良いらしい。令嬢たちの話では昔アスター様は愛する婚約者がいたけれど、アスター様が人気者過ぎて婚約者が嫉妬して大変だったのだとか。
結局、嫉妬深い婚約者はアスター様を捨てて別の方と結婚をした。アスター様が苦笑いをして話をしてくれていた内容と辻褄が合うわ。
まぁ、剣一筋なのは変わらないのでしょうけれど、女にとっては言葉の一つは欲しい所よね。
そうして令嬢達と楽しく話をしていてふと見ると、マレナ嬢の顔が青白い事に気づく。
「マレナ嬢、顔色が優れませんわ。体調が悪いのではなくて?」
私がそう口を開くと、令嬢達の視線が一斉に彼女に集まった。
「す、すみませんっ。今朝から、体調が優れず……」
そう言い終わらないうちに彼女はゆっくりと椅子からバランスを崩すように倒れてしまった。その様子を見た令嬢たちは動揺し、どよめきが起こりはじめていたので私はすぐに騎士を呼び寄せた。
駆け寄ってくる騎士達。
私は従者と令嬢の前へと立った。手をかざし魔法を唱え、小さな魔法陣で倒れた令嬢の容態を探る。
「……毒の形跡はないわ。マレナ嬢の魔力を視ても体調不良のようね。よかったわ。彼女を医務室へと連れて行って頂戴」
私は騎士に指示をすると、後ろで控えていた騎士の一人にマレナ嬢は抱きかかえられ医務室へと向かっていった。
少し場を乱してしまったわ。
「皆様、折角のお茶会を慌ただしくしてしまいましたわ」
私がそう謝罪すると、参加者のうちの一人が席を立った。
「クレア陛下の咄嗟の対応に私は感動致しました。たかが一令嬢に自ら赴かれ、体調を診ていただけるなんて。それにクレア陛下の特別な魔法陣を目にする事が出来て感動しました」
その一言を皮切りに令嬢たちから賛辞を送られた。
「皆様、有難う。けれど、折角のお茶会を騒がせてしまいました。今日はこの辺でお茶会をお開きにします。少しばかりですが、後日お土産を届けさせます」
閉会の挨拶をすると令嬢達は私に挨拶をしてから騎士達にエスコートされて馬車へと乗り込んでいく。しっかりとフォローは忘れない。
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