19話 指を三回
「転送魔法を発動する許可をもらえませんか? エノアヴァレスさん」
その言葉に、二人はぽかんとした表情を浮かべた。いや、ブリガットやバルグリットも同じだった。辺りが一瞬だけ静まり返ったが、すぐにブリガットたちの馬鹿にしたような笑い声が響き渡る!
「ヒャハハハハッッ!! レヴィアンタァ、そんな状況でなにを言ってやがる!??!?」
「やれるモンならやってみればいい。ただし、魔消石の手錠がハメられた今の状態をどうにか出来るモンならなぁ~~!?」
「そうさ! いくらお前の転送魔法が凄まじかろうと、魔消石がハメられてる今の状態じゃあ魔法なんか使えねぇじゃねぇかよ! そんなことも忘れたのか~!?」
「その……通りですわ。せめて突入前に、アナタの拘束だけでも解いておかなかった私の判断ミスで……」
「そうですね。確かに今の私は、魔消石の手錠がはめられています。それでも」
私はエノアヴァレスさんの目を真っすぐに見て、言った。
「私なら、この状況をどうにかできます。でもその前に、エノアヴァレスさんにひとつ約束してほしいんです」
「な、なにを……」
「もしこの状況を打破できたら――私のお願いをなんでもひとつ聞いてくれませんか?」
「…………」
エノアヴァレスさんは、私の言葉が意味するところをよく分からないようだった。それでも、このまま死ぬよりはマシだと判断してくれたのだろう。
「分かりました。私の命を救ってくれた恩ということで、一つだけなら。約束しますわ」
「そうこなくっちゃ」
これで、言質は取れた。
ならばもう、躊躇する必要はどこにもない。
「待たせたわね。転送魔法の真髄――見せてあげる!」
「なにを……するつもりだ」
私の表情からただならぬ自信を感じ取ったのか、バルグリットが少し怯んだ表情を見せた。
「なにって……別に? 指を三回鳴らせばそれでおしまいよ」
宣言どおり、私は指を鳴らす。
まずは一回。
私を拘束していた魔消石の手錠と鎖が、バラバラと地面に落ちた。
「「「「「「…………は?」」」」」」
その場にいる全員が絶句して硬直している間に、もう一度指を鳴らす。
オクトパンドラが一瞬で姿を消し去った。
「「「「「「……………は!?!?!」」」」」」
その場にいる全員が驚きの表情を浮かべている間に、最後の一回、指を鳴らす。
ブリガット、エルヴァント、ルシテウス、そしてバルグリットの四人は、顔だけを残して全身が地面に埋まったッッ!!
「はい、万事解決!」
「「「「「「はァァァァーーーーーーーッッッッッ!?!?!?!?!」」」」」」
その場にいる全員の絶叫が、研究室の中に響き渡ったのだった。
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