16話 真相の究明へ

「あ、あの〜。どうして私はこんなに目に合わされているのかしら?」


 ヘラクレックスのこんがり肉を思う存分に堪能した私は、気が付けば再び魔消石の手錠をはめられ、それだけでなく全身を鎖でがんじがらめにされた状態でエノアヴァレスさんに引きずられていた。


「アナタの能力は、より警戒をしなければいけないと判断したまでです」


 エノアヴァレスさんは私と目も合わせず、冷たく言い放った。それを見たメリジュナさんは苦笑を浮かべる。


「彼女からすれば、完全に想定外だったのだろうさ。まさか、あのヘラクレックスを一人で倒してしまうだなんて思ってもいなかっただろうからね。なぁ?」


 メリジュナさんが問いかけるが、エノアヴァレスさんはつれなく顔を背けるだけだった。


「私とエノアヴァレスは、過去にも一度ヘラクレックスと死闘を繰り広げたことがあってね。二人で力を合わせて、どうにかギリギリ勝てた強敵だった。だから彼女は、君が一人で倒してしまったことに──」


「おしゃべりが過ぎますわよ、メリジュナ!」


 エノアヴァレスさんが空に掌打を放つと、空気砲がメリジュナさんのすぐ傍を通り過ぎる。後方の火山岩が激しい音を立てて爆散した。


「別に悔しくなんかありませんわ! ぽっと出の最底辺冒険者に、過去の自分を超えられたところでな~んとも思いませんもの! なんなら今の私が本気を出せばヘラクレックスくらい簡単に倒すことが出来ましたとも! そう、あれは転送魔法の真髄とやらの力を試したに過ぎませんのよ!」


「はいはい。そういうことにしておくよ……」


「見ていなさいメリジュナ! 次こそは私の力が、アナタをとっくに上回っているということを思い知らせてあげますわ。アナタの力を頼らずとも私は……」


「すぐムキになって。相変わらずカワイイ奴だ……」


 メリジュナさんは子供のように癇癪を起すエノアヴァレスさんを見て、愛おしげな表情を浮かべるのだった。なんというか、強くなった自分の強さをメリジュナさんに見せたいんだなぁということが伝わってきて、こっちまで頬が緩んでしまう。だとしたら、エノアヴァレスさんが活躍する機会を奪ってしまって悪かったかな? と思うが、あんまり気にしないことにする。

 そんなことを考えていると、メリジュナさんが表情を引き締めて私たちに呼びかける。


「さぁ、そろそろ気を引き締めていこうか。先ほどの件で、この火山内になにかが起こっていることは疑いようもない事がはっきりしたからね。もしかすると王が言うところの黒幕も案外、近くに潜んでいるかもしれない」


「なんでも来やがれですわ。なにが来ようと血の海に沈めてやるまでです」


 エノアヴァレスさんの意気込みに私も同感だった。こんな濡れ衣を着せられた状況とはさっさとオサラバしたい。ドラゴンが出ようと鬼が出ようと、転送魔法の力でサクッと解決してしまおう。

 でも、どうせ出てくるなら出来るだけ美味しいモンスターがいいなぁ、と私はよだれを零しながら思うのだった。

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