14話 火山の異変3
「ギャラアアアアアアアアアアアッッッッシャ!!!!!!」
ヘラクレックスの放った無数の黒炎弾が眼前に迫る! 私は落ち着いてその一つ一つが通過する軌跡を予測し、その境界を連続的に転送した!
「ギャッ……ギャアアア!!???」
転送先は、ヘラクレックスのお腹の内側を指定! 体内から小さく爆発するような音が響き渡る度に、ヘラクレックスは怯んでいる!
「その様子を見ると、どうやら効いているみたいね!」
炎を吐くようなモンスターは往々にして火に強い耐性を持つが、それは表皮や排炎器官が丈夫だからである。しかし、体内となると話は別! 消化器官までも火に耐性を持つようなモンスターなんて、それこそ溶岩を主食にするような変わり者くらいのはず――その推測は、どうやら間違いではなかったようだ。
「ブルギャァァァァァァッシュッ!!!」
黒炎弾は通用しないと判断したのだろう、ヘラクレックスは頭を下げ、巨角をコチラへ向け突進を放ってきた! 超重量・超弩級の肉塊が凄まじい速度でぶつかってくるとなれば、それだけで人間の体なんて木っ端微塵になってしまうだろう! しかし恐れることはない。私には転送魔法の真髄が付いているのだから!
「えいッッ……やぁっ!!」
ヘラクレックスの周囲の境界ごと転送し、そのまま90度反転させる! 突進の勢いをそのままに地面へ向かって激突したヘラクレックスは、轟音と共にその衝撃を全て首だけで受け止めることになる!
「ギャ……ギャァ……?」
その衝撃の凄まじさと、自分がいま何をされているのか分からない混乱、さらには転送酔いが生じたためか、ヘラクレックスはしばらく身動きが取れなくなってしまう! それも仕方のない話だ。攻撃を仕掛ければ全て自分にダメージが跳ね返ってくるのだから。いくら知性が発達しているドラゴン種といえども、得体の知れない恐怖に襲われているだろう。
「ギギャァアッッッ!!!」
ヘラクレックスは片足を引きずりながら私に背を向け、逃げようとしたがそうはさせない!
「大人しく往生しなさい!!」
私はヘラクレックスの周囲を転送し、近くの溶岩だまりの底へ沈めると、さらにその体内へ向けて別の場所から大量の溶岩を転送する!
「ゴボッ……ゴボコボッ……!!?」
ヘラクレックスは灼熱の海に溺れながらなんとか脱出しようともがいていたが、溶岩の海から脱出しようとする度にまた元の場所へ転送してやる。そうしてじっくりと、溶岩の熱で焼き上げていく。ギルドのコック長を兼任するマスター直伝の肉焼き術である!
『いいかレヴィアンタ。火耐性を持つモンスターの肉を美味く焼くには、内側と外側、両方から加熱するのが重要なんだ』
そう言いながら、器用に火炎魔法を操って白金タウルスの肉を焼いていた、マスターの得意げな表情を思い出す。
マスターの教えに忠実に作業を繰り替えていると、やがてヘラクレックスの体表にこんがりと焼き色が付き始め、とうとうピクリとも動かなくなった。
「よし、そろそろかしらね!」
ここが潮時と判断した私は、溶岩の熱によって調理されたヘラクレックスを再度、私の前に転送する。近くで肉の焦げる美味しそうな匂いが漂ってきた……ああ、もう我慢できない!
「もう食欲の限界よ! いただきます!」
私は本能のままヘラクレックスの肉に齧り付いた!! かなり筋肉の筋っぽさが目立つが、溢れ出してくる肉汁が堪らなく美味い!!
「う、美味ァァァァァァッッッ!?!!? なにこれ!? これがドラゴンの味!? ちょっと美味すぎるんですけど!? しかも自然界に存在しない、超貴重な味って考えるだけでお得感がヤバいわ〜! あぁ〜迸る肉汁が堪らない!! ご飯!! ご飯が欲しくなる〜!!!」
「……………………」
「……………………」
一本角の悪魔のこんがり肉を貪る私を、二人のS級冒険者は呆気に取られたように見つめているのだった。
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