竜安禅師取材メモ 15/16 猫

 東京6:00発、東海道新幹線のぞみ1号は定刻どおり8:08、京都駅へ到着した。私は何か勘違いをしていて、竜安寺へ向かうJRバスは8:30発だった。それに乗ると竜安寺着は9:01になり、拝観時間は始まっていた。私は、大勢の観光客に混じって寺を回った。

 疑天竜安と名乗る僧侶はでっぷりと太った老人だった。「虎の子渡し」「七・五・三の庭」「石が一つ必ず隠れる配置」という、ガイドブック通りの説明を聞き流し、私は観光客の間に座った。

 すると、四方八方から猫が現れ、思い思いの場所に穴を掘って糞をすると丁寧に埋めた。観光客がざわつき始め、寺の関係者が慌てている。

 猫は泰然自若で、それぞれ一匹ずつが日当たりのよい石の天辺に柔和に丸まった。僧侶達は箒の柄で猫を追い払おうとしていた。拝観は中断された。私は溜息をついて座を立った。

 ふと思い立って数えてみると猫は十六匹いた。呵々という笑い声が庭に響いた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る