第11話 ガチャガチャ
――なんだこりゃ?
俺の目の前に突然、巨大な箱が現れた。
サイズ感はさておき、これは既視感がある。
あ、そうか、ガチャだ。ガチャガチャだ。
いわゆるネットゲームの〇連ガチャとかそういうのではなくて、小銭を入れてレバーを回してカプセルが出てくる例のアレだ。
「君にはそれくらいシンプルな方がいいと思ってね」
キングの声がやたらと脳に響いて鬱陶しい。直接、脳内に話しかけられるのは不快極まりない。
「その箱の中には65536個のカプセルが入っているんだ。そして、その中に精霊の入ったカプセルが幾つかある。それを引き当てれば、今まで通り精霊を召喚することが出来るってワケさ」
「仕組みは大体知ってるからいい、そもそもこんなデカイのどうやって回すんだよ」
「相変わらず君はバカだな。この世界で君が見ているものはあくまで僕の作り出している映像に過ぎないんだ。そのビックサイズは説明用さ」
キングがそう言うと、巨大なガチャガチャが見る見るうちに小さくなって、最終的には前世の現実世界にあったようなサイズ感にまで縮小していった。これなら何とか持ち運び出来そうだ。
「君のために、キャリーも付けてあげるよ」
――便利なこった。車輪がついて、更に持ち運びが便利になった。
「ところで、どうやって回すんだ、金はねえんだぜ」
「君は救いようのないバカだな、例の呪文唱えてみなよ」
言われた通りに唱えてみる。
『この命を賭して天に命ずる』
すると一枚のメダルが空から降ってきた。
「そのメダルでガチャガチャを回せるようになるんだ、良かったじゃないか」
「非効率だろ、どのみち当たりのカプセル引かないことには能力使えないんだから、メダルくらいケチらずによこせよ!」
「君は、強欲だな、バカなくせに求めることはいっちょ前なんだな」
「なんとでも言えよ、メダルくらいケチらずによこせよ」
「仕方ない、サービスしてあげる。二度とないぞ」
空から大量のメダルが降ってきた。
俺はそれを数日前にグッドラの能力で作り出していたバッグにまとめて入れた。
――まあ、めちゃくちゃありがちなゲームだけど、抽選結果が目に見えて分かるのは有難いし、単純にガチャガチャ引くのが子供の頃から好きだったから、俺得ではあるか……
しかし、と考える。
65536個の中から当たりを引っ張るなんて、まるでパチンコの抽選みたいだな。だとしたら、俺には丸っきり向いてないような気もしてくる。
もっとも、種銭は呪文を唱えれば無尽蔵に降ってくるんだから、財布の中身を気にせずに打ち続ける事が出来るって考えたら、悪くはない。
が、相変わらず、戦闘には向かねえよな。
どこの世界で、戦場でガチャガチャ引く奴がいるってんだよ……
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