第6話 ギャンブルーレットの七精霊
最初にグッドラと出会い別れて以降、三時間で呪文を唱えた回数は都合153回。この回数に意味はない。たまたま、そうなっただけだ。
それだけ唱えて、グッドラに会えたのは22回。ならせば七回に一度くらいの割合で呼び出すことが出来そうだった。三回連続呼び出せたかと思うと三十連続で失敗したこともあった。
グッドラの能力はそれほど強いものではなかった。何かを壊したり瞬間移動をさせてくれることはない。攻撃魔法の類いは全く無理だった。だが、生きるために必要な食料や水、生活物資などを作り出してくれたのでかなり助かった。
とりあえず、三日分の食料と水、それを持ち運ぶためのバッグ、足が痛かったので湿布も作り出してもらった。そして、ギャンブラーズエデンがどんな場所なのかを聞き出し、他の七精霊についての情報もゲットした。簡易テントや寝具も作り出してもらえたので、このままここで野宿をすることも出来た。とりあえず、歩き疲れた体を癒したかった。
グッドラの他にも、呼び出すことの出来た精霊が二匹いた。
『ベルン』と『チャンセ』だ。
ベルンは二度現れ、チャンセは一度現れた。
ベルンは男の子の精霊で、少し生意気な奴だった。俺のことをバカ呼ばわりして、ムカつかせたが、その能力は攻撃に特化していて、初見の俺を驚かせた。その能力のデモンストレーションで二回の召喚を使い果たしてしまった。先にグッドラから情報を聞き出していれば無駄遣いしなくて済んだのに、序盤の方でベルンが立て続けに召喚されたので仕方なかった。
そして、チャンセは大人の女性の姿をした美しい精霊だ。フツーの人間みたいな体型で、羽根もなければ空を飛びもしない。チャンセは癒しの精霊だった。彼女に抱き締められると傷や痛みが完全に癒えるという。グッドラから仕入れた情報によると、七精霊のなかでも遭遇しにくいレアな精霊らしく、それをたかだか153回の試行回数で召喚出来たのは奇跡かもしれない。歩き疲れて痛めた足も、彼女が抱き締めてくれた途端に治った。それどころか体全体に力が漲るような気がして、癒しの効果の高さを実感することが出来た。
グッドラから仕入れた情報をまとめてみる。
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《 ギャンブルーレットの七精霊 》
グッドラ……当選確率は高め。生活必需品や食料を作り出してくれる。かわいくて優しいやつ。
ベルン……当選確率は高め。生意気なやつだが、攻撃能力に特化していて、その威力は計り知れない。岩を砕いた炎攻撃と、大地に穴を開けた氷攻撃は実際に目の当たりにすると大したものだった。本来はもっと当選するらしいが、ヒキが悪いので全然出てこない。
チャンセ……当選確率はかなり低いレアな精霊。癒しの能力を使うことが出来る人間のような見た目の綺麗なお姉さん精霊。抱き締められると傷や痛みが完全に癒える。グッドラに聞いた話によると、死んでさえいなければどんな重症でも治してくれるらしい。戦闘で死にかけたときに召喚出来ればまさに救いの女神になるだろう。
フリーズ……当選確率は低め。見た目は分からないし、能力のすごさも分からないが、時間を止めることが出来るらしい。
ループ……当選確率はかなり低め。上に同じく、詳細は分からないが、こいつを引き当てることが出来ると、いわゆる確変状態に突入して、ルーレットの当選確率が爆上がりするらしい。要するに単体でどうこうっていうより、ブースターとしての役割ってことだろう。
ジエンド……当選確率は激低。その名前の通り、すべての危機的状況を終わらせることが出来るレベルのチート級の能力を持った精霊とのこと。ループを引き当てて当選確率を上げた状態でもないと、まず召喚出来ないって話。どんだけヤバいんだろう、気になる。
ゴッド……当選確率不明。過去に一度も召喚されたことがないらしい。なので能力も不明、出現確率も不明。高確率状態でも当選しない、もはや都市伝説の類い。同じ七精霊のグッドラですら会ったことがないらしい。本当に存在してんのか?
《 七精霊の召喚について 》
一定の当選確率に基づいてそれぞれの精霊が召喚される。召喚することの出来た精霊から、一度につき一つの能力を行使することが出来る。呼び出せる回数に上限はなく、当選さえすれば一日に何度でも召喚させることが出来る。原則として当選確率は一定だが、ループの能力を行使した場合に限り、当選確率が変動することが許可される。高確率について、その確率の上昇幅や継続時間などは、召喚の都度異なるものとする。
一度召喚した精霊は二十四時間以内にその能力を行使しなければならない。但し、二十四時間以内であればいかなるタイミングでもその能力を使うことが出来る。また、連続で当選さえすれば複数の精霊を一度に呼び出すことは可能だが、同じ精霊を連続で当選させることはできない。仮に当選したとしてもその権利は無効となり、ストックすることも出来ない。
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