異星人に常識を求めてはいけない。真夜中デートに誘われたので無視して散歩します
ノンギーる
第1話
『■■■。■■■☆■■s◇■◆!>!o@?◆!』
安穏とした夢の世界でまどろみは、脳内に直接響くラブコールで強制終了されられた。
うるっさいなぁ…… いきなり何なんだ??
寝ぼけ眼を擦りながら目を開けても、自室には朝の光など届いておらず闇の帳に包まれたままだ。
時計を確認してみれば時刻は午前2時をちょっと過ぎた辺り。
ド深夜である。
こんな非常識な時間帯に連絡を入れてくるのはあいつしかいない。自称俺の婚約者である、地球外から来た異星人だ。
どうやらデートのお誘いらしい。どんなに昼間デートへ誘っても俺が毎度用事があると断るから、時間帯が悪いと考えたようだ。
この時間帯なら用事はありませんでしょう?! 一時間後に迎えに行きますからデートしますわよ!!
ということらしい。いかれてるのかな? 異星人に地球の常識を求める方がおかしいのかもしれないが、地球にいる以上は地球の常識をもっと勉強しろと強く求めたい。
無視して二度寝してもいいが、そうすると迎えに来た時に叩き起こされるのは目に見えている。
眠たいから寝るの優先してもいい? と一応聞いてみたら案の定デート後に寝ればいいと返して来た。眠たいって言ってるだろ地球言語本当に理解してるのかな??
言っても聞かないのは今まで経験上わかっている。仕方ない、今夜はもう寝るのを諦めよう。
そうと決まれば善は急げだ。今日のスケジュールを早速考え、夜行性のため普段構ってやれない愛犬と散歩することに決めた。
田舎ゆえ夜空は都会と違って曇っていない。月や星から降り注ぐ柔らかい明かりで視界は確保され、散歩するのに不自由はしなかった。
いい散歩日和である。愛犬も嬉しそうにグログロとしたしっぽを振って俺の前を這いずり、三つある頭からは興奮しすぎて涎が垂れ、地面に落ちる度にじゅうじゅうと黒煙を上げていた。
ちょっと一般的な犬とは違っており人に見られたら発狂されることもあるが、俺にとっては可愛いかわいい愛犬である。
近頃は夜に化け物が出歩いていると周囲でもっぱらの噂であり、夜間の外出自粛が暗黙の了解となっている今、俺も愛犬の安全のため夜の散歩を控えていたが気にし過ぎていたのかもしれない。
二時間ほど脳内に響く声を無視しながら近所をぐるっと周回したが、噂されている化け物と出会うことはなかったのだから。
変わったことといえば民家の側を通った時に時たま絶叫が聞こえた位で、いくら田舎で家と家との間隔が開いているからといって真夜中に騒ぐなんて近所迷惑だと思ったものだ。
そうして明け方になる頃にはもはや脳内の声も聞こえなくなり、異星人でも流石に諦めただろうと思っていたのだが。
家に帰ったら実家が消滅していた。
家が建っていた場所は更地になっており、元から何もなかったかのよう。
そうきたかぁ、お家デートしたいって言ってたものね。家ごとデートするってありなのかよ!
その後、家を人質に取られた俺は渋々だがデートすることになるのだった。地球の常識の範囲内で。
は?? 俺も常識がない? お前よりはあるが?? 人の愛犬が何だって言うんだ、こいつは宇宙怪獣じゃなくて犬に決まっているだろう。
異星人に常識を求めてはいけない。真夜中デートに誘われたので無視して散歩します ノンギーる @nonjusu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます