第31話
アレシア様ならびにララティーナ……ついでにメイドさんとも別れ、僕はルルシア王女殿下と同じ馬車に乗って最前線へと向かっていた。
「改めて感謝申し上げます。和人様……あなたのおかげで私は自分を取り戻すことが出来ました」
僕の前に座るルルシア王女殿下が僕へと深々と頭を下げる。
「いえいえそんな!頭をおあげください。僕のような人間にわざわざ王女殿下が頭を下げる必要はありませんよ」
「いえ、そういうわけにはいきません。和人様がいなければ私がこれ以上どんな罪を犯すことになっていたか……考えるだけで震えてしまいます」
「……ルルシア王女殿下。罪を犯したのはルルシア王女殿下を乗っ取っていた魔族にございます。決して貴方様が罪の意識を覚える必要はありません」
「いえ、決してそういうわけにはいきません……私は、絶対に許されないことをしてしまったのですから。貴方にも……私は許されないことをしてしまいました。貴方が異世界に召喚されてから今日に至るまでの扱いは適切とは決して言えないものでした。本当に申し訳ありませんでした」
再びルルシア殿下は僕へと深く頭を下げる。
「……確かに、私のこの世界に来てからの生活は決して楽なものではありませんでした。ですが、アレシア様と出会い、メイドさんと出会い、ララティーナと出会いました。私の異世界生活もまた、決して楽なものではなかったですが……それでも悪いものでもありませんでした。ですから、そこまで罪悪感を覚える必要はありませんよ」
「……ッ!そう、言ってくれるのであれば、嬉しいです」
「私はルルシア王女殿下を恨んでいませんから。何か責めるつもりもありません。貴方がそこまで何もかもを背負う必要はないのです」
「……そういうわけにもいきませんから」
「そうですか。では、まずは共に最初の試練。魔族との戦いに勝ちましょうか。我々で人類の戦線に安定感をもたらしましょう」
「えぇ、そうですねッ……私は、人の上に立つ王女としての責務も……罪を犯した者としての責務もあります。少しでも犠牲者の数を減らして見せます」
僕の前に座るルルシア王女殿下は覚悟の決まった言葉で僕の言葉に頷いた。
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