第21話
魔族の侵攻を防ぎ、僕たちが一息ついていたタイミングであった。
「「……ッ!?」」
僕たちのいる陣地へと膨大な魔力が向けられていることに気づいたのは。
「影よ!呑み込めッ!!!」
僕はすぐそばにいたアレシア様を抱き寄せ、影を展開。
信じられないほど濃く、強力な魔力の濁流が僕たちを呑み込む。
「……ぐっ!」
その魔力は僕の影であっても完全に呑み込み切ることが出来ず、オーバー。
影が盾としての効力を失い、弾かれ、そのまま僕はアレシア様と一緒に魔力へと飲み込まれる。
アレシア様の身を守る魔道具の数々も一瞬で効力を失って吹き飛ばされる。
「ァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!」
何もかもを呑み込んでいった魔力の濁流。
それが消えた後のここはまごうことなき地獄であった。
陣地など跡形もなく消えてなくなり、兵士は全滅……生き残りなど誰もいない。
この場で息があるのは僕とアレシア様だけ……そんなアレシア様も既に意識を失い、この場で意識があるのは僕だけ。
「……クソったれが」
僕は悪態をつきながらも立ち上がり、感じ取った自分の方へと近づいてくる敵の存在の方へと意識を向ける。
「貴様か。奴より送られてきた敵とは……あの一撃を受けてなお立ち上がる。多分お前だな」
その敵は翼を広げ、空を浮遊する一人の魔族。
「感謝しろ、人間。魔王たる我がわざわざ殺すために出向いてやったのだ……感謝してさっさと死ね」
そう。
この場に現れた敵は既視感のあるこの世界のラスボス……魔王であった。
「……は、はぁ?」
あまりにもいきなりすぎるラスボスの襲撃に僕は困惑も怒りも混ざった声を上げる。
《スキル『運命に弄ばれる者』が発動しました。試練:魔王との邂逅。個体名、アレシア・ラインハルトを見捨て、魔王から逃亡してください》
そんなときだった。
僕のスキルが声を上げたのは。
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