第54話
黒光りする甲殻の体を持つ怪物。
きっとこの怪物が試練の口上に出てきた蟲毒之王であろう。
「なんで……」
「友の元に駆けつけてくることがそこまで不思議?」
僕は呆然としているララティーナに対して口を開く、ボロボロの状態でへたりこんでいるララティーナの前に立ち、蟲毒之王との間に入るよう立つ。
「なるほど……どうやら君は心躍る私の敵足り得る技量はありそうだ」
ただ歩いているだけの僕を見て蟲毒之王が楽しそうな笑みを浮かべ……たのか?顔も人間のそれじゃないからよくわからん。
「そう言ってもらえるのであれば良かったよ」
僕は自分の手にある剣を構え、蟲毒之王へと向ける。
「そこの女は君の大切な人のようだ……男との一騎打ちに置いて余計な要素入れたくはない。少しばかり下がろうではないか」
ララティーナに危害が入らないよう蟲毒之王は配慮し、その場から下がってララティーナから距離を取る。
……なんというか知性なき化け物を予想していたんだけど、ここまで理性的で配慮の出来る奴なのか。
少しばかりやりにくい。
「じゃあ、僕も行ってくるね」
それを見た僕も蟲毒之王の方へと寄ろうと一歩進める。
「……待って。なんで、私のところに来てくれたの?わ、私は……ッ!」
そんな僕へとララティーナが身を寄せて
「動けないんだから……そこで見てて」
なんとか立ち上がろうともするララティーナの額に手を当ててその動きを止め、口を開く。
「何も考える必要はない。ただ、ララティーナは僕に助けられればいいよ」
僕はそれだけをララティーナに告げ、彼女から距離を取って蟲毒之王の方へと近づいて行った。
……僕の試練だしな。
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