第52話

「おぉ……凄いですね」

 

 あれだけ巨大なドラゴンを一撃で粉砕してみせたアレシア様の魔道具による一撃を見て僕は驚愕の声を上げる。


「私の切り札」

 

 アレシア様は手に持っていた巨大な杖をその手から消し、深々と息を吐く。


「私の魔力はもう空っぽ。後は任せるね」

 

 僕たちが落ちた地下……その地下の床がゆっくりと上がりはじめ、落ちる前の高さに戻ってきたとき、アレシア様が僕の方へと視線を向けて口を開く。


「……ララティーナのことであれば僕にお任せください。アレシア様。必ずや自分がアレシア様を救って見せます」

 

 僕はアレシア様の言葉に頷く……なるほどね。これでアレシア様は離脱するのか。


「必ずあの馬鹿を連れ戻して……私じゃ、多分ダメだから」

 

 アレシア様は少しばかり悲しげな笑みを浮かべると、一つの石を取り出して僕に渡してくれる。


「ダンジョンから脱出するときに使える魔道具。敵との交戦時でなければ使える。最大三人。一応」


「ありがたく頂戴します」


 僕が石を受け取ると、アレシア様はもう一つの石を取り出す。


「私は戻る……お願いね」


「了承しました」

 

「ありがと」

 

 僕がアレシア様の言葉に頷いたことを確認したアレシア様は残り少ない魔力を込めて魔道具を発動。

 その姿がこのダンジョンから消えうせる。

 この場に僕一人が残される。


「……はぁー。行きますか」

 

 僕はこれから先、自分のスキル通りの事態になることを察し、ため息を吐きながら気合を入れ、少しだけ空いている鉄の扉の方へと駆け出した。

 ……何が運命を弄ばせる者だ。忌々しい。

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