第50話

 今日、ダンジョンにいるアレシア様はタイラントベアと戦った時とは違い、魔道具による完全武装である。

 アレシア様の魔道具装備限界数である12個の枠、すべてに国宝級とも言える魔道具を装備する現在のアレシア様の身体能力も使っている武器の攻撃力も使っている防具の防御力もタイラントベアと戦った時とは比べ物にならなかった。


「燃えなさい。焔龍」

 

 アレシア様の手に握られている剣が炎を纏い、一つの龍となって魔物たちへと牙を剥く。

 炎の龍が魔物たちを焼き、炭へと変えていく。

 アレシア様の範囲攻撃は絶大であった。

 強力な魔道具の数々……実にうらやましい限りである。


「……あれがあればタイラントベアに苦戦することもなかったんだろうな」

 

 僕はアレシア様の無双ぶりを見てぼそりと感想を漏らしがら僕は僕で魔物を斬り殺していく。

 僕はアレシア様と違って魔道具はここで手にした指輪一つのみで一気に魔物を殲滅するような便利魔道具は持っていないので、ただただ魔力と身体能力によるごり押ししか出来ない。


「ふー」

 

 僕の魔力は決して多い方ではない。

 魔力の操作技術であれば自信があるのだが……魔力量は察してくださいというレベルだ。

 この後、僕はララティーナを守りながらの蟲毒之王戦が控えている。

 ここで魔力を使い果たすわけにいかない……僕は慎重に戦っていかねければならなかった。


 というか、ララティーナを守りながら僕一人で戦うってどういう状況なんだ?……アレシア様がここで死ぬとかはないよな?

 ……ここも気をつけないといけないんだよな。

 考えなきゃいけないことが多すぎて反吐が出る。本当に嫌だ……このクソスキル。


「魔物のレベルが上がった」


「そうですね」


「まだいける?」


「当然です」

 

 僕はアレシア様の言葉に力強く頷く。


「なら良い……ギアを上げていくわ」


「お供します」

 

 どれだけ魔物を殺しただろうか?

 尽きることのなさそうな魔物数々を前に嫌になりながらも僕はアレシア様と共に魔物と戦い続けるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る