第49話
ララティーナ・ラスト。
ラスト公爵家の長女として生まれた彼女は生まれながらの強者であり、人の上に立つ者である。
「……ごめんなさい」
そんな彼女が他人を駒として使いつぶすことも、下へと叩き落とすような経験も……決して一度や二度じゃない。
とても褒められたことじゃないが、彼女は他人を死んでしまうような状況へと追い込むという行為自体に慣れてしまっていた。
それでも自分の友をそんな状況に追い込むのは初めてであった。
ララティーナにとってアレシアは良き友であった。
和人も傲慢でとてもじゃないが良い印象を抱けない他の異世界人とは違い、好感の持てる人物であり、ララティーナも彼に対して勝手にではあるが、友情を抱いていた。
「ごめんなさい……ごめんなさい。それでも……私は、父を助けたいの……ッ!」
だが、それでも……それでも。
ララティーナには二人よりも重要なことが存在していた。
それはララティーナの父親である。
彼女の父親は今、不治の病にかかり、寝込んでいるような状況にある。
それを治すには伝説上の存在である霊薬、エリクサーが必要となる……昔からの文献を多く集めているラスト公爵家。
ラスト公爵家の持つ文献に同じく伝説上の存在であるダンジョン、天空殿の攻略法とそこでエリクサーが製造されていると記載されていた。
ララティーナは愛する父を救うため、藁にも縋る思いで天空殿へとやってきたのだ。
「……あの数の魔物を倒すなんて無理。正攻法でクリア出来るようなダンジョンじゃない」
広い部屋の地下。
天空殿で唯一そこだけに大量に湧いている魔物たち。
Aランク冒険者パーティーでも大きく苦戦するような魔物が多く湧くような場所で戦い続けるなんて不可能に近い。
だから……生贄としてララティーナがエリクサーを確保するまでの時間を稼げる強者であるアレシアと和人を地下へと叩き落としたのだ。
「……ごめんなさい」
本来であれば広い広間の床を突き破って湧いてくる魔物たちの脅威から解放されたララティーナは広い広間を抜け、鉄の扉へと手を置いた。
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