第38話

「やるじゃねぇか!ガキィ!」


「まさかガンズをフルボッコにするとは思わなかったぜ!」


「元からなんかやっていたのか?」


「というか珍しい髪色と瞳の色しているな」


 晴れて冒険者になることが出来た僕は多くの冒険者たちに囲まれ、話しかけられていた。


「え、えっと……」

 

 僕を囲んでいる人の数は尋常じゃなく、しかも全員が同時に喋ってくるのでなんて言っているのか聞き取れず、自分がなんと告げればいいのかわからず困惑する。

 僕は聖徳太子ではない。


「ほーら、新人に絡まない。絡まない。同時に話しかけられているせいでどう反応すれば良いかわからず困惑しちゃっているだろ?」


「むっ……そうか、すまねぇな」


「それもそうだな」


「すまねぇな、坊主」


「ふぅむ……触った感じ、筋肉がついているように思えない。ぷにぷにの柔肌で女の子みたいだ」


「……ッ!?」

 

 そんな僕の元にやってきたのは一組の男女であった。

 高身長で筋肉質なイケメンが僕の周りに集まっている冒険者たちに散るよう指示し、これまた男と同じく高身長でナイスバディを持った露出度の高い恰好をしている美女が僕のことを抱きかかえ、全身をまさぐってくる。


「ひゃ!?……まっ」


「ふぅむ。君の体ではどう考えても近距離戦で力を発揮出来るとは思えない……魔力を活用して戦うのかな?魔力を力に変えるのは難しいはずなんだが……」


「……?」

 

 僕の体をまぐっている美女の言葉を聞いて僕は内心で首をかしげる。

 え?魔力を力に変えるのって難しいの……?というか魔力を身体能力に変換させるのに難易度とかあるの?

 この世界に来てから一度も聞いたことないし、ゲームでもそんな概念出てこなかったよ?


「そこぉ!セクハラすんな!」


「むっ」


「あっ、ありがとうございます」

 

 いつまでも僕の体をまさぐっていた美女の頭をいつの間にか近づいてきていた少女が全力で叩いて、僕を開放する。


「おいおい。そいつだって男だぞ?メロのような美女に体をまさぐられて嬉しくない奴はいないだろうよ。俺がお願いしたいくらいだぜ」


「加齢臭のひどいおっさんは御免よ」


「ひでぇな」

 

 そして、酒瓶を片手にする歴戦の戦士感を醸し出すおっさんが僕の方へと近づいてきた。

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