第33話
この街に来て、宿で移動の疲れを癒して次の日。
恐らく初めてとなる僕の胃世界の街での自由行動が認められていた。
「……凄いなぁ」
僕はアレシア様から好きにしていいというお墨付きをもらって今、この街に立っていた。
「もぐもぐ」
血抜きが甘いのか、正直に言って微妙な味の串焼きを食べながら街をぶらぶらと散策する。
初めて目にするものが多く、こうして街を歩いているだけでかなり楽しめる……獣人の子、しっぽ触らせてくれないかな?
「やっぱり異世界と言えば冒険者だよね!」
串焼きを食べ終え、残った串を握りつぶして塵へと変えた僕は冒険者ギルドへとやってきていた。
創作物にもあったような世界中に影響力を持つ信じられないような冒険者ギルトがこの世界にも存在していた。
冒険者ギルドのこれまで辿ってきた歴史とか面白そうだな。
「お邪魔しまーす」
僕はそんなことを考えながら冒険者ギルドの中へと入る。
冒険者ギルドは酒場も兼ねているのか、置かれている多くのテーブルには冒険者と思われる人たちが昼間から酒をのみ、どんちゃん騒ぎしていた。
「受付はあそこかな?」
受付と思われる可愛い女性たちが立っているカウンターを見つけた僕はそちらの方へと近づいていく。
「すみません」
「はい。なんでしょう?ご依頼がおありでしょうか?」
「いえ、冒険者になりたいのですが」
「え?」
僕の言葉を聞いて自分が声をかけた受付嬢が驚きの声を上げる。
……僕の背は低く、筋肉も大してついていないので決して強そうには見えないだろう。
でも、この世界には魔力があるんだし……見た目で判断するのは危険じゃないかな?
「どうしましたか?」
「いえ、なんでもありません。冒険者になりたいのですね……えっと、それでは」
「おいおい、お前のようなひょろがりが冒険者になれるものかよぉ」
「ちょ!?マドラさん!」
酒を片手に顔を真っ赤にした強面のおっさんが強引に僕の肩へと腕を回し、絡んでくる。
「おぉー、テンプレだ」
物語に出てくるような絡まれ方をした僕は思わず感嘆の声をあげてしまう。
「て、てんぷれ……?テメェ。何を言っていやがる」
「あっ。勝手な独り言なのでお気になさらず。それで……少しばかり加齢臭がひどいので近づかないでもらえますか?」
「ちょ!?」
「……テメェ。誰に喧嘩を売っていやがる?」
「加齢臭の臭いおっさんですが?」
僕の肩を砕かんと言わんばかりに力を籠めるおっさんの方へと視線を向けた僕は小さく笑みを浮かべ、口を開いた。
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