第32話

 ララティーナに誘われ、ダンジョンに行くことになった僕とアレシア様。


「おぉ……!異世界って感じがするわ」

 

 行くことになったダンジョンの近くにある街へとやってきた僕は街の様子を見て歓声を上げる。

 武器を持って道を歩く強面の男たち、同じく武装をした女性たちに、猫耳が生えていたり、犬のしっぽが生えていたりする人たちを見て僕のテンションは既に最高潮だった。


「……なんというかただ街を歩くだけでこんなに驚いてくれるとは思わなかったわ」

 

 そんな僕を見てララティーナが声を上げる。


「いや。自分は基本的にラインハルト公爵家の敷地から出ないので。街をこうしてしっかり歩くって多分初めて。元の世界じゃ見れない街の光景、雰囲気だけで僕はもう既に楽しい」


「ねぇ、アレシア。ちょっと和人の扱いひどすぎじゃないかしら?結構……というか、かなり可哀想よ?こんなに抑圧されていることある?」


「……本当に反省する。もっと気にかけるべきだった」

 

「いや、大丈夫ですよ?アレシア様。僕は所詮使用人に過ぎませんから。そんな気を使ってくださる必要はありませんよ」


「……いや。うん。これから本当に気をつかう。うん。貴方は私の使用人である前に客人なのだから。今までの私がおかしかった」

 

「いや!本当にそんな気を使う必要ないですよ!」

 

 僕は本気で反省している様子のアレシア様に慌ててしまう。


「和人。こういう言い方は卑怯だけど執事が主人に口答えしていいとでも?和人は大人しくアレシアからの好意をありがたく受け取っておきなさい」


「むぅ」

 

 僕はララティーナの言葉に口を閉ざされる。


「わかりました」

 

 それを言われてしまったら僕は頷くことしかできない。


「それで?街に来たけどこれからどうするの?今からダンジョンに行くの?」


「いや、そんなに早くはいかないわよ。そもそも移動で疲れているだろうし、ダンジョン探索のための準備時間も必要でしょう?それに和人も和人で個人的に街を楽しむ時間があった方がいいでしょう?」


「それはまぁ」

 

 僕はララティーナの言葉に頷く。


「ということでダンジョンの方に潜るのは三日後とかにしましょうか。でも、とりあえずは宿ね。宿の方に向かいましょうか」


「うん」

 

 僕たちはララティーナの案内に従って宿の方へと向かった。

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