第21話

 僕とアレシア・ラインハルトで協力し、魔力を込めて振り下ろした剣からは膨大な魔力の奔流が溢れ、タイラントベアを呑み込む。


「ガァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 響き渡るタイラントベアの悲鳴と魔力の光が僕の視界と聴覚を潰す。


「……やったかな?」

 

「ッ!?」

 

 僕の隣にいるアレシア・ラインハルトが背筋をヒヤッとさせる死亡フラグを立てたことに少しばかりの焦りを覚えながら僕は目を開く。


「……ァァァ」

 

 目を開けるとそこには膨大な魔力の奔流に飲み込まれ、全身から滂沱の血を流して倒れ伏すタイラントベアがいた。


「おぉ。凄いな……想像以上の攻撃力です。魔力共鳴は単純な足し算じゃないんですね」


「うん。魔力共鳴は掛け算だから……本当は魔力の波長を合わせるってかなりの高等技なんだけど……あのメイドの言っていた通り本当に天才なのね」


「そう言ってくれると嬉しいです……ふぅー」

 

 僕は褒めてくれたアレシア・ラインハルトにお礼の言葉を告げた後、深々と息を吐く。


「……お疲れのようね」


「はい。今回ばかりは疲れました……」


 命のやり取りをするなんて生まれてこの方初めてだ。


「……ガァ」


「……」

 

 命のやり取りの中のプレッシャーと疲労感は僕の人生でも類を見ないほどに心を蝕んだし、こうして多くの血を流し、とうとう息の根を止めたタイラントベアを見ると同情心のようなものが沸き上がってしまう。

 自分の手で殺したのにもかからず、だ。


「早く帰り、お風呂に入ってゆっくりと睡眠したい気分です」


「……それはちょっと待ってもらっていい?」


「え?なんででしょう」


「この先に見て欲しいものがあるの……本当はこっちの方に来てすぐに連れてきてあげようと思っていたのだけど」


「当然お供させてもらいますよ」


「それなら嬉しい。私についてきて……そんなに時間はかからないから」


「わかりました」


 僕はアレシア・ラインハルトの言葉に頷き、歩き出した彼女を追って僕も歩き出したのだった。

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