第19話
それから幾度ぶつかり合っただろうか?
三時間?五時間?……いや、僕が長く感じているだけで本当は
剣と腕がぶつかり合い、大地が抉れ、木が折れるような戦いを繰り返す。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
初めての実践、初めて相対する己に殺気をぶつけてくる相手との戦いということで僕の精神は確実に蝕まれ、僕の体は想像以上に疲労していた。
「大丈夫?」
僕と共に戦っているアレシア・ラインハルトが心配の声を上げる。
「はい……問題ありません」
僕は精一杯の強がりを口にし、必死に息を整える。
「そう……本格的に無理そうなら下がって。私がしばらく一人で相手しているから。その間に休んでて」
「……そうなったときにはお願いしますッ!」
僕は魔力を大量に込めてタイラントベアへと斬りつける。
「ガァ!!!」
その一撃はタイラントベアの腕の皮膚を軽く引き裂く程度で終わり、有効打を与えられない。
「……クソ」
既にタイラントベアは全身から血を流しているような状態であるが全然疲労しているようにも、痛そうにしている様子もない。
ダメージを与えられている気がまるでしない。
「……グルルルルルルル」
たった一発。
タイラントベアの攻撃を一発で喰らえば僕とアレシア・ラインハルトはそのままゲームオーバーになり得る。
なんというクソゲーだ。これは。
「そうね」
僕の隣でレイピアを華麗に操るアレシア・ラインハルトが口を開く。
「あのメイドから魔力共鳴は教わった?」
「魔力共鳴……?いえ、教わっていませんね」
僕はアレシア・ラインハルトの言葉に首を横に振る。
「そう。なら、今ここで覚えて頂戴」
「へ?」
僕は突然の無茶ぶりをアレシア・ラインハルトに言われ、阿保みたいな言葉を口から漏らしてしまう。
「このままやっていてもジリ貧。普通に競り負ける可能性が高いわ。なら賭けに出るしかない……私たち二人の魔力を掛け合わせてそのありったけを突っ込むわよ」
「よくわかりませんが了解です」
僕はアレシア・ラインハルトの言葉に頷く。
「大丈夫……あなたならすぐにやり方がわかるはず。タイラントベアと戦いながらだけど、私の初めての授業。楽しんで」
「ぜ、善処します」
僕はアレシア・ラインハルトの言葉にそう返すことしかできなかった。
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