第15話
アレシア・ラインハルトの今までの生涯は苦難に満ち溢れたものだった。
彼女の碧色の髪と紫の瞳の組み合わせはかつて人類を脅かした魔女と同じものであり、アレシアはずっと誰からも見た目だけのせいで魔女の再来と言われ、目に見えない形で迫害され続けていた。
両親を若くして事故で失い、若くしてラインハルト公爵家の当主となった彼女には常に試練が待っていた。
部下からは敬遠され、社交界でも冷笑を浴び続け、彼女に味方などおらず永遠に一人。
だからこそ、アレシア・ラインハルトは期待した。
全くもって異なる価値観を得た異世界の人間に……彼ら、彼女らなら私を受け入れてくれると。
「……ッ」
そんなアレシアの期待はそもそもスタート地点に立つことさえ出来なかった。
長い年月をかけて徹底的に破壊され尽くした彼女の自信と植え付けられた劣等感が異世界人の見受けを引き受けると手を上げることを許さなかった。
そんな最中だった。
「……」
スキルなしを宣告され、誰も見受けを引き受けてくれる者がおらず、顔面を蒼白にしていた一人の少年を見つけたのは。
「良いわ」
アレシアは手を上げる。
誰からも必要とされていない彼ならば、私の手を拒むことなんて出来ない。
そんな卑怯な考えの元、アレシアは手を上げた。
「その子はうちが引き取る……別に私の家も権利を持っているわよね?」
アレシアは運の良いことに彼女の期待に答えてくれるかも知れない異世界人の身元を引き受けることが出来たのだった。
■■■■■
一ヶ月経った。
既に幾度も顔を合わせた。
一度たりとも拒絶させることも、侮蔑的な視線を向けることも、恐怖の視線を向けられることもなかった。
アレシアは何を考えているのかよくわからない少しばかり特別なメイドの思惑によって作られたアレシアと和人との二人の時間の中で、勇気を振り絞って尋ねた。
「え、えっと……実に美しく、気品のある人だと思いますよ」
その返答は百点満点であった。
見た目を、褒められた。
ずっと疎ましく思っていた見た目を。
それはまさに目の前の少年が自分を魔女と重ねず、自分を見てくれる人であるという証明であった。
「ふふふ……そう」
アレシアは十数年ぶりに笑みを漏らしたのだった。
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