第14話

 アレシア・ラインハルト。

 僕の身柄を保護してくれた人であり、この家の主人であるが……一ヶ月経ってもなお僕は未だに彼女とまともの会話を交わしていなかった。


「……」


「……」

 

 僕はそんな彼女と共にラインハルト公爵邸の裏にある森の方へと遊びに来ていた。

 

「……」


「……」

 

 僕とアレシア・ラインハルトの間に会話など一つもなく、アレシア・ラインハルトはずっと無表情であるため何を考えているのかわからない。

 すっごく気まずい。

 

 まぁ、馬車のときと違って僕が自由に歩けて景観も森で変化があるからそこまでの地獄ではないんだけど。

 僕ってば森の中を歩いたりするの好きなんだよねぇ。


「……なにこれ」

 

 僕は虹色に光る薬草を前に足を止め、疑問の声を上げる。


「それは魔草」


「え?」

 

 僕の疑問の言葉に答えるように口を開いたアレシア・ラインハルトへと僕は驚愕の視線を向ける。


「魔力を蓄えた草で、それを使って魔力を回復させることの出来る薬を作ることが出来る。触っても問題ない……少し温かいよ」


「へぇ……そうなんですか」


 僕は彼女の言葉に頷き、手で魔草へと触れる。


「ほんとだ。温かい」

 

 魔草はほんのりと温かく、僕にやすらぎを与えてくれる。

 

「おぉ……凄い」

 

 こんな植物元の世界には絶対にない。

 異世界だけのものを見て僕のテンションが上がる。


「少し、聞いていい?」

 

 そんな僕に対してアレシア・ラインハルトが声をかける。


「え?あぁ……はい。何でしょうか」

 

「私を見てどう思う?」

 

 アレシア・ラインハルトは両腕を広げ、僕に自分の姿を見せてくる。


「へ?アレシア様を見て、ですか……?」

 

 あまりにも急すぎる彼女の疑問に僕は驚き、疑問の声を上げる。


「うん。そう」

 

 そんな僕の疑問に大したアレシア・ラインハルトは頷く。


「え、えっと……実に美しく、気品のある人だと思いますよ」

 

 正直に言って彼女の内面など何も知らない。

 だから、僕はとりあえず彼女の見た目を褒めることにした。

 実際アレシア・ラインハルトはびっくりするくらい可愛いから間違ってないよね。

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