第12話

 雲ひとつ無いきれいな快晴にて輝く熱き太陽の下。


「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 僕は息を切らし、額より多くの汗を流して死にそうになっていた。


「もう限界ですか?もう少しばかり頑張ってほしいところですが」


「……うるさい」

 

 見ているだけでも暑そうな厚手のメイド服を着ているにも関わらず汗一つかいていないメイドさんの方へと視線を向け、悪態をつく。

 今、僕はグラウンドでメイドさんと剣を持って模擬戦をひたすらに繰り返していた。


「ふぅー、ふぅー、ふぅー」

 

 僕は呼吸を繰り返して息を整えながらメイドさんの言葉を思い出す。


『魔力とは体内に流れる力そのものです。魔力は身体を強化したり、体内の温度をコントロールしたり、スタミナを回復させたり、様々なことが可能です。魔力の量が強さにその者の限界に直結し、魔力を操る質がその者の強さに直結します……魔力操作に理論なんていりません。とりあえず戦って覚えてもらいましょう』


 ……何も教えられずにいきなり戦闘が始まった僕は文句の一つや二つを言っても許されるのではないだろうか?


「……」

 

 いや、落ち着け。

 不満を垂れていたところで現状は何も変わらない。

 相手をよく見ろ、観察しろ、その技術の全てを奪え……魔力は力。自分を変える力だ。

 魔法を発動して炎を出すなんて派手なことは出来ない……だが、身体強化を極めれば枝で山を斬ることだって可能。

 想像しろ、夢想しろ、想起しろ。


「……」


「良いですねぇ。その瞳。ゾクゾクしちゃいます」


「こんのドSメイドがァ!」

 

 30分間戦ってようやく知覚出来るようになった魔力をメイドさんの見様見真似で操作しながら手に持っている剣を振るう。

 剣の振り方もメイドさんの見様見真似だ。


「相手の魔力の流れが見えている……便利な瞳ですねぇ。才能に溢れている。私の動きを見て学んでいるようですし……筋が良い」


「褒められているんだろうけど、少しばかり不穏……ですッ!」

 

 僕がメイドさんへと振るった剣はいとも容易くメイドさんに弾かれる。


「ふごッ!?」

 

 そして僕はメイドさんの蹴りをお腹にダイレクトで食らって地面を転がる。


「おぉぉぉぉぉ」

 

 地面を転がった僕はなんとも言えない声を上げ続けた。

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