第6話

 アレシア・ラインハルト。

 美しい碧色の髪に紫紺の瞳を持った抜群のプロモーションを誇る高身長で妖艶な雰囲気を纏った少女。

 そんな実に美しい少女ではあるが、その性格は苛烈にして悪辣。

 乙女ゲーのリリストにおいては平民である主人公に貴族による権力を笠に言葉で罵り、時には暴力さえも振るうような少女であった。

 

 そんな正に悪役令嬢と呼ぶに相応しいアレシア・ラインハルト……その人と僕は今まさに同じ馬車の席で向かい合って座り、移動をしている最中であった。

 僕たちの乗る馬車の周りには完全武装で馬に乗り、進んでいる多くの騎士の姿も確認することが出来る。


「……」


「……」

 

 移動を続ける馬車の中は重苦しい沈黙によって支配され、馬車のゴロゴロという舗装されていない砂利道を進む音がだけが響きわたり続けていた。


「……」


「……」


 一体何を話せばいいのだろうか……?

 僕は沈黙が永遠に続く馬車に乗りながら話の話題を掴みことが出来ず、ただただ黙り続けることしかできない。

 

 アレシア・ラインハルトがスキルを持たない僕と言う無能を何の目的かはわからないけど引き取ってくれた後、スキルを確認していないクラスメートは誰も居なくなったのであの場はそのまま解散。

 その後、クラスメートたちは自分を引き取ってくれた各貴族家の領地へと向かうことになった。

 ちなみに頼めばいつでもクラスメート同士を合わせてくれるそうだ。

 それが嘘か真かはわからないけど。

 今、僕とアレシア・ラインハルトが乗っている馬車もラインハルト公爵領に向かって進んでいる最中なのだ。

 

「……」


「……」


 どれくらい沈黙の時間が続いただろうか?

 天上で輝いていた太陽も今ではもう地平線へと沈みかけている。

 そんな時間帯になってようやく馬車が止まり、馬車の扉が開けられる。


「本日はこちらの街で宿泊してもらいます。ラインハルト公爵家領に着くまで後三日ほどかかります。本日はこちらの街の宿でおくつろぎください」

 

 アレシア・ラインハルトに、というより僕に説明するようにこの馬車の運転をしてくれていた御者が言葉を話してくれる。


「あっ……は、はい」

 

 えっ……?この地獄の空気の馬車移動ってば後三日も続くの?

 

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