第4話
輝く黄金のような長い髪に宝石のような蒼い瞳、完成された美しい相貌。
クラスメート全員がルルーシアの美しさに魅了され、体を硬直させる最中、僕だけは圧倒的な情報量を前に固まっていた。
異世界に召喚された……その召喚先の世界が自分がやっていたゲームの世界だなんてことがあるのか?
他人の空似……いや、よく考えてみれば異世界召喚そのものだってあり得ないこと。その世界がゲームの世界であってもさほど不思議ではないだろう。
そもそも異世界召喚の時点でこれ以上無いほどの不思議だからな!
「……和人」
僕が内心で色々と思考を回していたところ、服の裾を花蓮に引っ張られ、名前を呼ばれる。
「ふっ。大丈夫だから」
僕は不安そうな表情を浮かべている花蓮の頭を撫で、声をかける。
花蓮はそんな僕の言葉を前に首を縦に振り、表情をほころばせる。
「皆さんとしても現状について疑問が止まらないでしょう。少しばかり話が長くなってしまいますが、事情をお話いたします。お近くの椅子に座ってお聞きください」
地べたにしゃがみこんでいる僕たちの近くに置かれている人数分の椅子。
それを指し示しながらルルーシアは笑顔で話し続けた。
■■■■■
大人しくクラスメート全員が言うことに従い、ルルーシアの話をまとめるとこんな感じである。
・今、人類社会は魔族の侵攻を受けており、ピンチの状況。
・そんな状況を打開するために異世界より強き者を召喚した。
・僕たちにはこの世界の人間が持っていない特別な力、スキルを持っている。
所謂チート能力が僕たちにあるこということ。
・元の世界に帰還することは不可能。
・そのわびとして出来る限りの願いは叶える。
・クラスメートたちの身柄は召喚した国の貴族家に各一人ずつ振り分けられる。
まぁ、こんな感じだろうか?
召喚した異世界人たちを王家がひとまとめにして育てるのではなく、各貴族に任せてその身柄をバラバラに振り分けて管理し、育てるというのはかなり珍しい設定なのではないだろうか?
……読者として見ている分には珍しい設定だなぁ、と流せるのだが、あいにくと僕たちの場合は今の現状が現実であり、設定ではなく制度。
不安のほうが大きかった……ハズレの貴族家に当たったら最悪だ。
「勇者様方の持っているスキルの調査は別室にて行います。私の後についてきてください」
ずっと喋りっぱなしだったルルーシアはそう言うと、歩き始める。
そして、その彼女の後をクラスメートのみんなが何も文句を言わずに大人しくついていく。
……ちょっとクラスメートのみんなってば彼女に従順過ぎじゃないか?
困惑している人もいる。不安そうな人もいる。興奮している人もいる。
だが、パニックにはならない。騒ぎにはならない。
全員が何の問題行動も起こさずルルーシアの言う通り従っている……そのことに対してなんとなく嫌な予感を感じながらも僕は大人しくクラスメートたちと共にルルーシアの後を追っていった。
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