第3話

 学校に行くための支度を済ませ、遅刻しないように少しだけ早足で学校へと向かった僕はいつも通り靴箱に入っている大量のお手紙をゴミ箱へと破棄し、教室へと向かう。


「……おっしょ」

 

 教室の前にたどり着いた僕は若干の重みを感じる教室の扉を開け、教室の中へと入る。

 その瞬間だった。

 教室の床、壁、天井が急に光り輝き始めたのは。


「ちょ」

 

 あまりにも唐突過ぎる光りの輝き方に思わず僕は目を瞑り……その後。

 一瞬の浮遊感の後に僕の鼓膜を万雷の拍手と歓声が叩いた。


「……は?」


 急に耳へと入ってきた拍手と歓声に驚き、僕が目を開けるとそこは教室とは全然違う異世界が広がっていた。

 周りを見渡せば自分のクラスメートと先生がいるのだが、他は教室とはとてもじゃないが思えないような場所。

 現代日本ではめったにお目にかかれないような西洋風の宮殿の一室のような場所に僕たちは立ち、その僕たちを囲うように多くの神父のような服を着た人たちに囲まれていた。

 

「おぉう……」

 

 現代の高校生でこんな状況に陥っている中、自分の身に一体何が起きたのか。

 パっと思い浮かばない人は少ないだろう。特に男子は。


「……異世界召喚」

 

 今、僕たちが陥っている状況はアニメやラノベでよくある異世界召喚によく酷似していた。


「……どんなタイミング?」

 

 僕が教室に入った瞬間こうなるとか意味わかんないですけど?

 後少しばかり僕が教室に入るのが遅れていたら異世界召喚に巻き込まれずに済んだのに……ッ!まだクリアしていないゲームがァ!?


「ようこそお越しくださいました、勇者様」

 

 僕が心の中でゲーマーとしての悲痛な叫びをあげていたところ、案の定というべき言葉が僕たちに向けられる。

 この場で言葉を発したのは神父のような服を着た人たちの中で唯一全然違う服を着ている女性。

 豪華絢爛なドレスを身に纏った僕たちと同じくらいの少女が僕たちに聞こえるように話し始めたのだった。


「あなた方が訪れるのを我々は心待ちにしておりました」

 

 言葉を話す少女の見た目はこれ以上ないほどに芸術的で美しく、女子も含めてこの場にいたクラスメートたち全員を魅了して黙らせる。

 そんな中、僕だけは他のクラスメートたちと違う理由で硬直していた。


「私の名前はルルーシア・レイジャー。レイジャー王国が第二王女にございます」


「……ルルーシア・レイジャー」

 

 その名前、その見た目、その声……そのすべてに僕は覚えがあった。

 

「り、リリストの……?」

 

 ルルーシア・レイジャー。

 彼女は僕がつい先ほどまでやっていた乙女ゲーであるリリストに登場していたキャラの一人であった。

 ど、どういうことッ!?

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