第2話

 家の中に鳴り響いたチャイムの音。

 それに反応した僕は玄関にまで向かい、玄関の扉を開ける。


「はぁーい……うぉ!?まぶし」

 

 気だるげに玄関の扉を開けた僕は己の目に入ってきた陽の光を前に思わず表情を歪める。


「もう!陽の光を浴びてそんなしわくちゃな顔をするとかどんだけ家に引きこもっていたの?今週の土日はちゃんと外に出た?」


「……なんでそんなの花蓮に言わないといけないの?というか、こんな時間に何の用?」


 玄関の扉を開けたその先。

 そこにいたのは一人の少女……僕の幼馴染である天桜花蓮だ。

 腰まで伸びた黒い髪にパッチリと大きな黒い瞳、高校生とは思えないほどのスタイルの良さを持ち、運動神経抜群、頭脳明晰な完璧美少女である。

 土日に一度たりとも外に出ず、家に一人でずっと引きこもっていた僕とは正反対に位置しているキラキラとした陽キャだ。


「こんな時間に?じゃないわよ!もう学校に行く時間よ!そんなぼさぼさの恰好で何をやっているの?」


「……ぁあ。ほんとだ」

 

 ぽっけにあるスマホを取りだし、時間を確認した僕はそう呟く。

 僕が徹夜してクソゲーをクリアしている間に、そろそろ学校に行かないとヤバめの時間になっていた。


「早く準備してきなさい?私はここで待っていてあげるから」


「いや、僕は一人で行くから良いよ」


「もう!そんなこと言ってずる休みするつもりじゃないでしょうね?」


「サボらないよ……というか、君と学校に行く方が嫌」

 

 花蓮とは幼稚園から高校に至るまでの長い付き合いがあり、奇跡的にすべての学級に置いてクラスが常に一緒だったのだ。

 それゆえに、僕は花蓮とかなり仲が良いと勝手に思っている。

 だからこそ、僕は花蓮と一緒にいたくないのだ……完璧美少女である花蓮と。


 彼女と一緒にいたらどうしても僕は男たちからの嫉妬の視線を向けられ、ハブられることになって……うん。

 僕は中高とダブルでクソ陰キャぼっち。

 ちゃんと男たちからハブられ、毎日のように自分の靴箱に花蓮へと近づくなというメッセージが書かれた手紙を山のようにもらう羽目になっている。


「……そっか。ごめんね」


「別に気にすることじゃないよ。さっさと学校に行って友達を歓談しているんだな」

 

 僕はそれだけ言うと玄関の扉を閉める。

 

「ふわぁ……」

 

 強烈な眠気によって霞む頭を押さえながら僕は洗面所の方へと向かう。

 ……時間的には遅刻するかしないか瀬戸際の時間だな。


「やっぱり一番近い高校に通うことに正解だったな……遠かったら大遅刻だ」

 

 僕はゆっくりと学校に行くための準備を進めるのだった。

 

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