バーチャル配信者のボディーガードになった
椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞
配信者は干物女
「わーい。マオくんと、真夜中デートだね」
「なにがデートだっつーの」
僕は、ホシカさんに連れられてコンビニまでついてきた。
ホシカさんの、ボディーガードをするためだ。
今は三時間ほどゲーム配信を終えて、休憩中である。
コンビニで、おやつやおつまみの買い足しをするのだ。
配信後のコンビニ徘徊と、その帰りに飲む一杯が、ホシカさんの生きがいとなっていた。
デートと言っても、ホシカさんは僕の母の妹、つまり叔母さんである。
バーチャル配信者として活動しているホシカさんは、昼夜逆転していた。
そのため、大学生である僕とは生活のリズムが違う。
「あったかいねー、マオくん。コンビニの中って」
「はやく何か買って帰ろう」
僕はお菓子とジュースを、適当にカゴへと入れていく。
ホシカさんの買い物についていく報酬として、僕は何を買ってもいいことになっている。
ウチの大学は今、春休みだ。
ハメを外した学友と、鉢合わせるかもしれない。
「いいじゃーん。こんな美人を連れているってだけで、約得だよぉ」
ホシカさんが、チーちくをカゴにブチ込む。
「冗談言わないの! 早くおつまみ買ってきなよ」
ホシカさんが美人なのにモテないのは、きっとこんな干物だからだろうな。
着飾ってこず、服もジャージのままだし。
いくら近場のコンビニだっていっても、油断しすぎな気がする。
リスナーは可愛いアバターでしか、ホシカさんを知らない。
実物がこんなだとわかった日には、みんな幻滅してメンバーシップも解消してしまったりして。
「はあい。これこれ。これがジンソーダに合うんだよ」
チーズとアーモンドのあられを、ホシカさんは買う。
「飲み過ぎないの。また配信中に寝ちゃうよ」
僕が起こさなかったら、ホシカさんのイビキが全正解に配信されるところだった。
「やだやだぁ。お酒がないとプレッシャーで死ぬんだよぉ」
ホシカさんが、僕に抱きついてきた。
ボヨンとした感触が、僕の腕に当たる。
ホシカさんのバーチャルアバターは、ロリキャラだ。
中の人は、Fカップはあろうスタイルだけはいい干物女である。
「やめい。離れなさいよ」
なんとかホシカさんを引き剥がして、お会計に。
「ちょ……ホシカさ!?」
なんとホシカさんは、買い物カゴに「家族計画的なモノ」まで入れてやがった。
「待ちなさいよ! 親戚どうして、するマネじゃないだろ!」
「だって、マオくんにはいつか必要になってくるし」
「必要になる予定なんて、ありません!」
とはいえ、ここまで人が並んでいると返しに行けない。
ひとまず、買って帰る。
「ぶわー。さいこー」
スリッポンを引きずりながら、ホシカさんはジンソーダ片手におつまみを買い食いする。
「配信以外だと、マオくんと深夜デートしているときが、一番幸せだよぉ」
「僕、来年は卒業だよ? 働くんだよ?」
「じゃあさ、雇ってあげる。配信のだいたいもわかるっしょ?」
「そりゃあまあ。ホシカさんがいいなら、いいけど」
「やったね。じゃあ、こっちも卒業しようか?」
「ドサクサに紛れて、家族計画的なもの出すんじゃねえ!」
バーチャル配信者のボディーガードになった 椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞 @meshitero2
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