第7話 争奪戦の勝者は……?
リッチー討伐のため、一時的だがパーティを組んだ一行。
少し前に
……しかし。
「ほぉぉぉぉ! やはり空はいいのう! 空気がうまいっ!」
「どうじで………!」
「まぁ……うん。相手が悪かったな。私たち」
ワイバーンをめぐって紫雲対冒険者パーティ&オルタ・レヴィの戦いが始まり———紫雲の圧勝で幕を降ろした。
初めに紫雲は冒険者パーティへ突っ込み、一太刀で魔術師を撃破。その流れで剣士二人に突っ込んでいき、挙句剣士を盾のように使いながらレヴィへ肉薄。動揺したレヴィはなす術なく散り、オルタはいつの間にかやられている。
結果ワイバーンは紫雲のものとなり、現在リッチー討伐一行は大空を舞っていた。
その背中で、拳を叩きつけながら叫ぶオルタをレヴィが慰める様子が見える。
「ほれしっかりしろ手品師。遠くに大図書館跡地とやらは見えんのか。見つけたらさっさと転移の術を使え」
「人使いが荒すぎるッ!」
「使えるものを使っとるだけじゃ」
「一方的な搾取ッ!!」
そう叫ぶオルタを叩き起こす紫雲。もはや話の流れに取り残されたレヴィは苦笑いを浮かべるしかないようだ。
「む、ほれ、あれは違うのか?随分荒れた地のようじゃが」
「どこのことだ……?」
「ここから大体真っ直ぐいって右のところじゃ」
「“大体“が本当に大体すぎてわからないんだが……」
目を細めるオルタ。しかし、それでも見えなかったのか、ワイバーンの森の時のように魔法陣を展開してそこに目を通しながら周囲をじっくりと見る。
「ん」と小さく言うと、紫雲たちの方へ振り返った。
「……ここから十一時の方向に大図書館跡地が見えるな」
「おお、よかったな」
「ん? あれ、でも……」
レヴィが何かに気づく。
それを拾うように、オルタがまた紫雲を睨んだ。
「……あのさ、お前、真っ直ぐいって“右“っていったよな?思いっきり左なんだが?」
「あぁすまん。昔から左と右が混ざってしまうんじゃ」
「年食ってるからボケてんだろ」
「ここでこの竜の餌になりたいのか? のう
刀を包丁のように水平に構えて、左手は猫の手で何かを切るように刃を動かす紫雲。
細かく刻んでワイバーンに餌として与えるつもりらしい。
「…………ともかく、さっさと大図書館跡地へ飛ぶぞ。今から転移魔術を用意する」
「それは構わんが……この竜はここに残してくれんかのう」
「ん? なんでだ」
「はっ! まさかこのワイバーンを傷つけまいとする心遣い———」
「いや、単純に図体がデカくて邪魔なんじゃ」
「「お前に人の心はないのか」」
真顔で竜を邪魔扱いする紫雲に、人として大事なものの欠如を感じた二人。いくらワイバーンが魔物とはいえ、同情せざるを得なかった。
すると、ワイバーンの背中に魔法陣が展開される。かなり複雑な紋様が、ゆっくりと回転する。
「む、準備ができたのかい。オルタ」
「あぁ、だが、大図書館跡地へ直接飛ぶわけじゃない。少し離れたところへ転移する。それから準備を進めるぞ」
「いいじゃろ別に。準備するもんなんてないじゃろう」
「……レヴィは大荷物の運搬で疲弊。俺は転移魔術やら収納魔術の多用で疲弊。何よりワイバーン争奪戦で体力も魔力も削られてる。誰かさんのせいでな」
「準備運動で疲れてどうするんじゃ」
だんだんと、足との魔法陣の回転が加速していく。
「そろそろだな」
「……あ、オルタ。大図書館跡地の近くに小さな町があるぞ。そこの宿を借りよう」
そういって、地図をオルタに見せるレヴィ。
「ここなら転移先からも近いな。よし、じゃあ今日はそこに泊まるか」
「そうしよう」
そして、魔法陣の回転が最高速に達し、紋様が光の軌跡を描き始めると全員の姿が消えた。
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