第2話 「私は、女神様!」「俺、新卒様!」「あ…」「ああ…」女神様の吐息が、俺の髪にかかる。こんな展開、2度とこないだろな。決めてやれ!

 新卒入社をやってみた、俺!

 SNSで、たくさんのオモシロ動画を拡散して、たくさんの店をつぶしてきた、俺! 

 これからも、会社に勝ち続ける予定の、俺!

 「気持ち、良いぜ。ひひ」

 マジで、エッチっぽいよな!

 「レレンちゃん?入社、おめでとう!」

 「ありがとう、ママ!」

 レレンというのは、俺の本名だ。

 今どきは、「レン」という名前も、俺のような「レレン」という名前も、フツーになった。

 俺の目の前に、ちょこんと座る、女神様。

 「ほうら、ほうら」

 「何ですか?あ…」

 女神様を、ゆとりある世代の、最強新卒的な気持ちで、抱きしめてあげた。

 「あん…」

 女神様の声は、めちゃくちゃ、かわいらしかった。

 「ああっ、女神様!」

 「…何が、お望みなの?」

 「え、あのう…」

 「なあに?」

 「望みを、聞いてくれるんすか?」

 「当たり前じゃ、ないの」

 「やた!」

 「私は、女神なんですよ?」

 「やた!新卒パワーだ!」

 「そうよ?新卒君?」

 考えれば、エロエロな願いも、叶えられたかもしれない。が、言えなかった。

 ちょっと、もったいなかったかもな。

 「俺を、救ってください!」

 その一言が、出ていた。

 「救ってほしいの?」

 「女神様?俺、こんな生活は、もう、いやなんです!」

 「こんな生活って?」

 「社会って、何なんすか?」

 「それは…」

 「俺、新卒ですよ?新卒様、ですよ?」

 「じゃあ、私は…女神様」

 「俺は、新卒様だぜ!」

 「私は、女神様!」

 「俺、新卒様!」

 「あ…」

 「ああ…」

 女神様の吐息が、俺の髪にかかる。

 こんな展開って、ありなんですかね?

 やっぱり、新卒は、強すぎるよ。人間の女の子だけじゃなく、女神様まで、とりこにしてしまうんだからな!

 新卒な人間と、女神様。

 互いの気持ちが、不安定。

 「何を、救ってほしいの?」

 すごいぞ…。

 こんな日は、2度と、こないだろうな。

 今日、決めてやれ!

 いくぜ、新卒!

 新卒魂よ、輝け!

 「女神様?」

 「なあに?」

 「俺…」

 「なあに?」

 「俺…!会社で、いじめられているんですよね!」

 「あら、あら」

 「友達でもない人たちに、怒られることもあるんです!」

 「…」

 「俺、新卒なのに!」

 「…」

 「まったく…!」

 「どうしたの?」

 「皆、俺ら新卒を、わかってくれない!だれのおかげで、異世界的SNSの戦いがくりひろげられていると思っているんすかね?」

 「…」

 (この子、何、言ってんの?)





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