外伝 1ー2話 夏祭りにゃー


回り始めてから約2時間が経過した時。


「全部回ったにゃー!」

「ロミさん??全種類買ったのですか???」

「とてもおいしいですからね!買わないと損ですよ!ほらエリさんも!」

「いりませんわ!?わたくしこれでもダイエット中なのですのよ!!」

「それにしては~エリさんも半分くらいの屋台をまわっていませんでしたか~?」

「スライさん!?見ていましたの!!?隠れていたはずでしたのに……」

「私も気付いていたよ……言わなかったけど」


ミシュは、いつも通りの会話が始まったと、ため息をついている。


「にゃはは!まぁみんなで楽しめたらそれでいいにゃ!!次はなんにゃ?」

「次はライブからの花火大会らしいですね」


ロミが私にスケジュール表を見せてくれる。確かにそこには、10時からライブの、12時から花火大会が30分ほどあると書いていた。


「……ロミこの表は何処から持ってきましたの?」

「え?入るときに無料で置かれていました」

「全然気づかなかったにゃ……」

「私も取りましたわ~こういう行事ごとは、何でもスケジュール表を取るべきですわ~」

「勉強になったにゃ」

「私も取るの忘れたかも……」


ということで、私たちは早速ライブを見学するために、受付へと向かう。

そこには、凄い人だかりができていた。

なぜか私達に視線が来る。


「ねぇ……あの子たち、今年のスラチオ学園推薦組じゃない??」

「うそ……初めて見た」

「シャーリンさんとエリさんとロミさんがいる……」

「かわいい~」


あちらこちらから、そんな声が増えてきていた。

なんだろう……ものすごく有名人みたい。


「私達ものすごく見られていますわね……」

「スラチオ学園生だからでは~?」

「すみませーん!ここにスラチオ学園生はいますかー!?」


受付の人が走ってくると、私たちの事に気づいたのか、慌てて駆け寄ってくる。


「これはこれは……推薦組でしたか……どうぞこちらへ……優先させて案内させていただきますね」

「あ……ありがとうございますにゃ?」


私達は係りの人に連れられて、歩いて行った。

連れられた先は、目の前にステージがある超特等席で、ここにはちょうど5人分の椅子が準備されていた。


「あなたたちの為に、特別に用意させていただきました!!」

「本当にいいにゃ!?」

「さすがですわ~間近で見れますわ~」

「私の荷物どうしましょう……」

「ロミ……あなたどうして3年本のお菓子をここまで持ってきていますの!!?」

「ここで食べたらだめですよ……ロミさん……」

「さすがに食べませんよ!!」


そんな会話をしているうちに、観客が私たちの後ろの席に集まり始める……

かなり観客の人数が多かったのか、屋台を閉店させ、そこを椅子に変えるという、まさかの事態が起こった。

少し待機していると、照明が消え、周りが真っ暗になる。


「みんなー!準備はいいー!?」


と目の前に3人の女子たちが現れた。

その途端、周りから歓声やら悲鳴が巻き起こる。

私には良く分からなかったが、何やらすごい人たちというのは、見るからに分かる。


「凄いですわ~1級レース優勝者たちですわ~!」

「いや……書いてあったでしょ……」

「でも、こんなに間近で、ライブを観戦できることなんてありませんわよ……」

「私も同意します」

「楽しみにゃー!」

 

音楽がかかる、私の聞いたことの無い歌だったが、この種族たちの歌声に、ついつい入り込んでしまう……まるで……本物のライブを見ているようで。


(いや、本物のライブにゃね、よく良く考えれば)


「みんなー!盛り上がってるー!?次で最後の曲になりました!!次の曲は……伝説の世代の方たちが作った、あの楽曲となります!!」

「にゃにゃ??なんにゃ?」

「シャーリンもご存じだと思います」


ロミが笑いながら私の方を見てくる。

私には何のことだか分らなかった。

そんな不安を抱えたまま、音楽が始まると、私はすぐにその曲の正体が分かった。

そう私が初ライブした楽曲と、同じ楽曲なのだ。


「これ、あの伝説の世代たちが歌った曲なのにゃ?」

「そうですわ、まさに伝説の楽曲ですわよ」

「凄く心に響きます~」

「やっぱり曲凄く良い」

「ミシュさん泣いたらダメですよ……私までつられてしまいます……」


私達は曲が終わるまで、誘導される時にもらったサイリウムをぶんぶん振る。

両手で激しくサイリウムを振っていると、踊っている1人が気づいて、私に手を振ってくれる、もう昇天するかと思い、慌てて4人の方を向く


「手振ってくれたにゃ!!」

「うらやましいですわ~!」

「おめでとうシャーリンさん!」

「良いですねぇ……私も手を振ってみようかしら」

「ここ一番目立つ席だもんね……私も何度か目が合ってニコってしてくれた……可愛い」


私達は、その後も盛大にライブを楽しむのだった。

そしてひと通りライブが終わり、再び提灯ちょうちんともり始める。


「めちゃくちゃ楽しかったにゃ!!」

「ずっとその調子ですわね、シャーリン」

「気持ちは分かりますわ~初ライブ観戦はとても迫力ありますわ~」

「私も初ライブ観戦は確かにすごかったです……」

「他の鳥族のライブあまり見たことないかも……お姉様のばっかり見てたから」

「ちょっとお手洗い行ってくるにゃ!」


我慢の限界が近づいてきたため、慌ててトイレに向かう。


「空いててよかったにゃ~」

「ねぇ……少し時間いいかな?」


私はすっきりした顔で帰ろうとしたとき、後ろから急に呼び止められる。


「にゃ?にゃにゃ!!?」


そこに立っていたのは、先ほど私に手を振ってくれた、ライブの種族だった。


「初めまして、私はサフィー・ネンスと申します……エディオ族です。私の事はサフィーとお呼び下さい」

「初めましてにゃ!私は……」

「シャーリンさんですよね?存じております」

「にゃ??知っているのにゃ??」

「はい!あのレースとライブを、間近で見ていましたから!」


まさか、1級レース張本人が話しかけてくるとは思わず、目を見開く。


「それでこれに名前を書いてほしくて……」


と私に渡されたのは、何やら白色の色紙と黒ペンだった、私はこれの意味が分からず、目を丸くしていると、サフィーは照れながら横を向いてしまう。


「実は……あの走りを見てからファンになってしまって……サイン……お願いできないでしょうか……?」

「にゃ?にゃあああ!!??」


私は盛大に叫んだのだった。

しかし、断る理由もないので、とりあえず【シャーリン】という名前だけ書いておいた。


「ありがとうございます!嬉しいです!私がお手伝いできることがあれば、何でも言ってください!!」

「それなら私にもサイン欲しいにゃ!あっあと良ければ皆の分も……」

「分かりました!是非とも!」


と全員分のサインを、サフィーはスラスラと書いていく。


(流石、有名人にゃ……サインを書くのに迷いがないにゃ)


「はい、どうぞ!すみません。時間がかかりましたね」

「こっちこそごめんにゃ……全員分のサインを書かせてしまったにゃ~」

「とんでもないです!シャーリンさん達になら全然!!あとシャーリンさん!必ず1級レースを勝てると思いますよ!!応援してますから!」


サフィーは、そのまま私のサインを胸に握りしめ、走っていってしまった。

しかし……未だに心の整理がつかない……


「とりあえずいい人そうだったにゃ……帰るかにゃ~」


私はサイン用紙5枚を持ちながら、皆の元に戻っていった。


「はあああ!?シャーリンさんあなたそそそののサインは!!サフィーさんのおおですわわ!!!?本物ですわよこれ!!」


エリが飛びついてくる。

まぁ……何となく予想はしていた。

私は先程2人で話した内容を、みんなに伝える。


「皆の分あるにゃ」

「軽々しく言ってますね……このサイン直筆は……この世にこの5枚しかないですのよ??」

「シャーリンさんすごいです~」

「本当……シャーリンって人との距離すぐ近くなるわよねえ……しかもシャーリンのファンだなんて」

「ところでサフィーさんってどんな方なのにゃ?」


私が質問をすると、4人はあんぐり顔をした。

うん、私は何も知らないのだ……


「そ……そうですわね……なにも知らないのでしたわね……良いですわ!わたくしが説明してあげますわ!!まずサフィーさんは陸上1級3連王ですわ!」

「りくじょういっきゅーさんれんおー?にゃ?」

「いわゆる最難関称号……特定の陸上1級レース【ガバルミ】【ディーフィン】【ゴッドスピール】を1年で3連勝した者に与えられる名誉ある称号ですわ!!今回ライブしたのはその時のゴッドスピールで3連王になった、サフィーさん!そしてその時、2位だったレンシャ―さん!3位のキューさん!4位のチョフィーさん!5位のスラディオさんですわ!!」

「まさかサフィーさんが1番強かったのにゃ!!?」

「サフィーは私も聞いたことありますわ~『隠れた伝説娘』とまで言われている最強娘ですわ~」

「しかもサインはしないらしいからね……サインを持っているのは現状私達だけ……だと思う」

「こんな……もし発売されてても絶対に買えない代物ですわ……大金貨何万枚……になるのでしょうか……」


ミシュとロミまで、手を震わせながらサイン用紙を持っている、ここでやっと私は気づいたのだった、また何かやらかしてしまったと……


「まぁ~サインもらったからいいにゃ!!」

「「「全然よくありません!!!」」」

「うにゃあ!!?」


私達はその後、入学したら部屋に飾るということを決めた。

今回の夏祭り、私は正直どうなることかと思っていたのだが、なかなかいい感じで終わり、とても良かった。


ドーン!と音が鳴る。

どうやら始まったようだ。


「あっ!花火にゃ!!」

「忘れていましたわ!!」

「私とスライが飛んで人がいないところ探してくる!!」

「任せてくださいですわー」

「気を付けてくださいね2人共!ほかの鳥族の方たちの迷惑にはならない様に!!」

「私達も走るにゃ!!」


ということで私たちは一斉に、花火の見える穴場まで走っていく……今回の夏祭りは、最後色々あったが私にとって、絶対に忘れられない夏祭りになった。


(これからずっとみんにゃと一緒にいたいにゃ!)


私はついつい走りながらにやけてしまうのだった。


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