外伝 1-1話 夏祭りにゃー


私たちが、スラチオ学園に先行推薦入学してから、3日過ぎたある日、私達の部屋にある話が入ってくる。

ちなみに、先行入学時は部屋は自由で、大きさも選べたため、部屋には私、ミシュ、ロミ、エリ、スライが入学式まで一緒に生活することになっている。


「にゃにゃ??夏祭りにゃ?」

「そうですわ!少し遠いですが、巨大夏祭りがあるのですわ!!」

「良いですね!ものすごくいい屋台がたくさん出るんですよ!焼きそば……お好み焼き……ステーキ……かき氷……アイスクリームにクレープなどなど全40店舗以上!!……何個づつ食べるか悩みますね……」

「え??種類じゃなくて……個数……??」


ミシュがロミの発言に目を丸くしていた。

私も同じことを考えていたと思う……つまり最低限全種類食べるということ……その全種類に対して、何個づつ食べるのかという悩み……うんそういうことだろう。


「食べ過ぎは体に毒ですよ~?」

「私もそう思うにゃ……」

「ですから!練習で痩せればいいんです!!」

「いや……無理があるでしょ……」

「行くと決まれば、さっそく行きますわよ!!私も楽しみですの!!」


片手を挙げ、ウキウキしているエリについていくと、私たちは生徒会室前に着く。

外に出るためには、ここで外出届を出さないといけないらしいのだ、部屋番号を言えば全員の外出許可が出る。という凄いシステムになっている。

かつ今日は夏祭りということもあり、門限は通常夜の11時までだが、祭りや町イベントの時は、特別に深夜1時までOKになるそうだ。


「さぁ行きますわよー!!」


私達はスラチオ学園の外に出ると、そのまま祭り会場行きのサイ力車りきしゃに乗り込む。

サイ力者というのは、サイ族の人たちが走って動かす。いわゆる人力車みたいなものらしい。


「皆様スラチオ学園の新入生でしょうか?」

「そうにゃ!あなたは?」

「申し訳ありません!名乗り遅れました!私ヒリーと言います、今回は祭り会場の方にご案内させて頂きますね」

「そういえば私達お金持ってきてないよね?」

「そう言えばそうですわね……」

「スラチオ学園生の皆様に関しては、基本無料となっていますよ!」

「まだでも私達入学してないにゃ」

「推薦初期入学だと、特に優遇されますですよ?」

「ますですよって……」

「すみません……スラチオ学園生を乗せるのは初めてで……ついつい」


サイ力車は乗り心地が良く、本当に前世の車に乗っているような感覚があり、座席はモフモフで、あっという間に寝てしまいそうな心地よさだった。

しばらく乗っていると、見慣れた景色があたりを染めていく……


「あれ?ここって……」

「どうしたのですかぁ~?シャーリンさん」

「私とシャーリンが初めて会ったのこの森だったよね?」

「そうにゃ!私空き家から少し歩いたら、この道にたどり着いたんにゃ……懐かしいにゃあ……」

「そうでしたの?私もここには来たことありましたが……そのような家ここら辺にはありませんでしたわよ?ロミなら知っているかもですわ」

「わたしですか??私も知りません……ここら辺一帯は、街の探索係さんが全部探索して、森だけという結果になっているはずです」

「話に割り込みますが、この道をもう1年近く運んでいて、周りを探索しましたが何もありませんでしたよ~」


ヒリーが後ろを振り返ると、私たちは納得したように頷いた。

その後は、誰も話す話題も思いつかなかったのか、しばらく無言が続く。


「もうすぐ着きますよ!」


ヒリーが私たちの方に向かって呼びかける。

どうやらあまりに心地よかったのか、ついつい全員寝てしまったようだった。


「うにゃあああ!?」


私は、目の前の光景についつい叫んでしまった。

そこには道の周りに無数の提灯が灯されているのだ、ざっと1000は超えるだろうか……道全体をとても明るく照らしている。

これははしゃがないといけない!と私は何故か意気込む。


馬車を降り、ヒリーさんとお別れした私たちは、しばらく歩くことにする。

中々遠い道だが、よく見るとなにやら明かりが見えてきた。


「着くにゃー!」


私たちはついつい走って中に入る。

中は無数の屋台が並んでおり。さらにその奥には大きなステージが設置されている。

看板には『ライブ発表会!!』と書かれていた。



「ライブ発表会があるんだにゃあ……」

「そうですわね……元1級レース優勝者たちの特別ライブらしいですわよ。今は引退してパフォーマンスしているらしいですわ」

「わぁ~私ものすごく見てみたいです~」

「でもまだかなり時間あるけど……」

「でしたら私達で屋台を回りませんか?たくさんありますよ~」

「「「さんせーい!」」」


ということで私たちは、5人一緒に屋台を回ることにしたのだった。


「わたくし投げ輪したいですわ!」

「良いにゃーじゃあ5人で勝負にゃ!」

「良いですよ?今回も私は負けられません!!」

「私も負けませんわ~!」

「私も負けないよ!」


ということで私たちは、急遽投げ輪コーナーに向かっていく。

あまりの人の多さに巻き込まれると思っていたのだが、私たちが通る道は何故か皆開けてくれて通りやすくなっていた。

そうして歩いていると、目の前に投げ輪らしき屋台が見えてきた。


「いらっしゃい!!おや!スラチオ学園生だね!?今回は商品が充実してるよー!」


目の前の商品を見ると、そこには1マスから2マスで福袋、3マスから5マスでお菓子3年分、6マス~8マスが1級レース観客招待券、最後9マスパーフェクトでグループ全員分の1週間の温泉旅行券が手に入るらしい。

そもそも的は縦3×横3の9マス、そして挑戦できる回数は、15回とのことだった。


「君たちは……確かスラチオ学園の推薦組だよね!だったらサービスでリング20個あげちゃうよー!」

「誰からするにゃ??」

「わたしから行きましてよ!!ふふん!」


エリが自信満々に歩いていく。

よほど投げ輪がうまいのだろうか……すごく様になっているように私は感じた。


「行きますわ!!とりゃ!」


エリは横からスライドさせるように勢いよく手を振ると、リングがかなりの勢いで飛んでいく。

そしてそのリングは……壁を伝って……エリの頭に着地する、エリはワニ族なので、頭には小さな突起がちょくちょく付いており、リングが落ちずに頭に引っかかったのだ。


「にゃははは!!」

「ふふふ……!!なんですかエリさん!!?自分を的にしていますよ!」

「あらあら~」

「これは……奇跡……ふふ……」

「ええい!!もうやけくそですわ!!」


と一気に残りの19個を全て投げる。

そして……エリの頭に山積みになった。

ブーメランでも投げてるのだろうか、パワーが強すぎるのか、分からないが全て壁を伝い、エリの頭に乗ったのだ。


「「「「あはははっははは!!」」」」


私達は笑い転げるしかできなかった。どうやら……周りもエリの頭上にリングが20個も乗っている異様な様子に、笑うしかないようで……


「これは……ある意味奇跡ですね……良い物見せてもらいました。ふふ……0なんですが特別に福袋を差し上げます……ふふふ」

「ふん!奇跡を起こすのが、この私ですわ!!」


エリは頭からリングを取りロミに渡した。

福袋をもらい喜んでいるので、まぁ成功だとは思う……


「わたしですか……狙いは……お菓子3年分です!!」

「本当にお菓子好きだよね……」


ミシュが頭を抱えるも、ロミは気にせずどんどん投げては外し、を繰り返している。ちょうど3年分に合わせているようだ。


「えっと~ロミさん4マス入っているのでお菓子3年分です!!」

「やりました!!!」


ロミがこの世にないほど喜んでいる、屋台をこの後回るというのに……そうしてスライの番が回ってきた。


「私も頑張りますわ~ただ~したことないですから〜外しても許してくださいですわ~」


気が付けば、観客らしき人達が、ものすごく投げ輪屋台の周りを、囲むように集まっている……


スライは本当に初めてなのか、まさかのリングを縦向きに投げている。

結果は……予想の通り弾かれてばかりでとうとう残り8個になってしまった。


「すみませんスライさん……少しアドバイスしてもいいですか??」


店員の人が心配そうな顔をして、スライの顔を見つめている。

私も言いたかった……


「はい~?なんでしょうか~」

「その……縦向きで投げるよりも、投げ輪はこうやって、横向きに投げると良いですよ?」

「やってみますわ~。あっ!入りましたわ~やった~ですわ~!」


その後、スライはまるで別人かのように、8個すべて外すことなく、マスに入れたのだった。


(前から思ってたけど天然にゃ……)


「えっと……8マス成功なので特別レース観客招待券ですね!夏季の分はすでに無くなってしまったので、冬季の10月分をお渡ししましょう!」

「わーいですわ~!皆様と一緒に楽しめますわ~」

「じゃあ次は私の番ね!見てて!私の実力!!」


ミシュが自信満々にリングを持つ。

私はさっきの言葉がフラグになる……かと思ったのだがなんと9個のみでパーフェクトを取ったのだ。

つまり……ノーミスだった。


「えっと……ノーミスパーフェクトで……温泉旅行券です!!」


周りの観客から大拍手が起こった。


「私の出番が無くなったにゃ~」


私が下を向いていると、何やら屋台の人がもう1つ券を持ってくる。


「実はですね!ノーミスパーフェクトのご褒美として、高級ランビスランド招待券の挑戦券を得られました!」


周りからはどよめきが広がるも、私は何のことかわからなかった。

しかし、私も昔の私とは違うので、これが何か凄いものだというのは、確信している。

チラッとロミの方を向くと、ロミはその考えで合っています。というように大きく頷いた。


「やるにゃ!」

「ではルールを説明いたします!!基本は同じなのですが……今回は制限9個までとさせていただきます!そうですつまり……ノーミスパーフェクトが最低条件となります!!さらに1マス入れるたびに的が動きます!!動く速度はマスに入っているリングによって変わりますので……注意してくださいね!!」


私はリングを持つと的の前に立つ……


「行きます!!スタート!」


屋台の人の掛け声と共に、的がゆっくりと動き出す……正直動いているか分からない程度だが、かすかに動いていた。


「簡単にゃ!」


私は1つ目のリングを投げると、見事右上に収まる……その瞬間#少し的の動く速度が増した気がした。

その後も私は入れ続け……残りラスト1球となってしまった。ここまでで1番危なかったのは……5マス目を入れた次に速度配分を間違い、投げようとしてリングが手から滑り落ち、慌てて掴み直したことだろうか……


残りリングは1個……的はもうかなりの速度で動いていた。比べるならば……初めのゆっくりよりも、5倍は早くなっているように感じる。


(これで最後にゃ……決めなければ終わるにゃ……)


私は息を整え、ゆっくりと的に向かって投げた、投げたリングは、そのまま的に落ち……真上にはじかれた。


「にゃにゃ!!??」


私は終わったと膝をついた時、リングは上空で2回転した後、何もはまっていない真ん中のマスに落ちたのだった。


「「「わあああ!!」」」


周りから大歓声と、大喝采の拍手が巻き起こり、私は何が何だか分からずその場で立ち尽くしている。


「見事!!史上初の最難関ノーミスクリアー!!では!ランビスランドの招待券を、お送りいたします!!」


屋台の人が鐘を鳴らしている、周りの観客たちは、もうすでに私たちの盛り上がりと一緒に拍手をしていた。


取り合えず商品は全部獲得したため、これから他に、色んな屋台を回る事にしたのだった。

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