第14話 スラチオ学園入学祭決定にゃー


 「皆さん、ようやく今日で入学してから1週間が経ちました。このスラチオ学園には様々なイベントが開催されます」


周りからどよめきが沸く。中には考察班もいるようだった

私も何のイベントか全く見当がつかない。


「皆さん静かにして下さい!いいですね?そのイベントとは……その名も!【スラチオ入学祭】」

「「「「わー!!」」」」


周りは大歓声だった。

私は何のことかわからず混乱する。

昔の世界の学校では、入学祭はあまりなかったような気がする。何故知っているのかというと……私は、元々野良ネコなので、無断に入り込んでも、文句を言う人がいなかったためである。

いや……私の逃げ足が速すぎて、みんな追いつけなかっただけなのだが……


「このスラチオ学園自体入るのはすごく難しいのはご存じですわよね?」


どうやら、どうして叫んでいるのか?と思っていたことがばれてしまったようで……

隣からエリとロミが、私の顔を見つめてくる、なぜか顔は真剣そのものだった。

まぁ前にミシュが教えてくれた限り、相当競争率は激しい事はわかる。


「私達からしたら……このスラチオ学園のイベントに参加できるだけでも!奇跡なんですよ?普段は絶対見れないイベントですからね……」

「にゃ?一般解放はしてないのにゃ?」

「していますわ……問題はその事ではなくてよ……その参加者人数なんですの……この街のすべての人たちが集まりますの……私も行きましたが……うっ……」


エリとロミの反応を見るに、どうやら相当な大規模イベントらしい……そんなイベントの主催者に立つのが、私達ということだった。


(そりゃこんな反応になるにゃ……)


周りの興奮度は、もう収まることを知らずどんどん加速しているのだ……。

さすがの先生も、このままだと収拾効かないと思ったのか……。


「皆さん!!喜ぶのは分かりますが……スラチオ学園の生徒であることを、ちゃんと意識してください!!イメージが大事ですよ!」


先生の言葉に一斉に静かになる、さっきの賑やかさは一瞬で無くなった。それくらい、スラチオ学園の生徒という言葉に重みがあるのだ。

とはいえ、一瞬で静かになれる生徒たちも、なかなか切り替えがうまいとは思う。


「それではこのイベントの説明を行いますね!まずは屋台など……これは上級生たちとの親睦会のようなものです!ここで仲良くなって一緒に練習に加わるのもよしです!あと一般公開もするので一般客からの話しかけもあると思いますが……その時はスラチオ学園生として受け答えをお願いします!」

「なるほど……つまり上級生の練習メニューをここで聞きだすチャンスというわけですのね」


エリが何やら目を輝かせていた。

私とロミ、ミシュとスライはエリの思想に、すぐに気が付いていた。

しかし私には1つ不安があった。それは……


「人前苦手にゃ……」

「え?そうなの??あれだけ目立つ走りしてたのに……」


ミシュは私の意外な性格に、びっくりしていたようだ。いや……ミシュだけじゃなくロミ、スライ、エリも意外だったようで……

前世では、人間という巨大生物の中で暮らしており、怖い人間たちを結構見ているのだ。

だから結構、多種族の前に出るのは苦手なのだ。


「レースはあくまでレースの相手達と私だけの戦いにゃ……周りは関係ないにゃ」

「そう……言われてみれば……そうですね……私も周りは気にして走っていませんね……」


4人は私の言葉に考え込んでしまった。

そりゃそうだろう、今まで周りの事は気にせず、楽しく走ったり飛んだりしていているのだ。いざこういうこと言われると、何を言うか困ると思う。


「レースは楽しいですわ~」


不意にスライが話しだす、スライは何故か、空を見上げ手を前に組んでいた。

まるで、何かの悟りを開いているかのような……


「観客の応援が私たちの力になるときもありますわ~シャーリンさんがそれを感じ取ることが出来れば人嫌い無くなると思いますわ~」

「スライたまにいいこと言いますわね」

「私はいつでもこうですわ~」


それはないにゃ!と一瞬だけ突っ込みたくなったが、ぐっとこらえる。


「とりあえずこれからは準備時間です!!今日の昼までに各自グループを作り何をするか決めて準備をして下さいね!本番は来週ですよ!!」


私達はお互いを見つめ合う。

もうグループは決まったも同然……というより先生も、わざとこの席順にしたんじゃないかと思うくらい、5人の席が私を中心に、前後左右のお隣同士だったのだ。


「何するにゃ?」

「うーん……私はダンスが得意ですよ」


ロミが手を挙げる……がすぐにエリが止める。

結構慌てて止めたため、私たちはびっくりしてエリを見た。


「あなたのダンスはプロ級ですわ!!わたくしたちが下手なのが、バレてしまいますわ」

「達って……」

「言葉も出ないにゃ……」

「一緒にされましたわ~まぁ、ダンスしたことないですわ~」


ミシュが若干不満げな顔をする。

私もダンスには自信がないため、これに関しては否定しかねる……


「でもでも~シャーリンの歌声、とても綺麗ではありませんでした~?」

「ええ??私知らない曲だったから、伸ばすところで後からあ~しか言ってないにゃ」

「あ~あれシャーリンの声だったの!?てっきり仕込み入ってるのかと……」


ミシュが目を見開く。

どうやら何か凄いことがあったらしい?私には良く分からなかった。


「何回か伸ばしているときだけ、すごい綺麗な声が聞こえたんです~」

「私たちはすぐに、シャーリンの声だって気付いてびっくりしましたわ、曲を知らないことは知っていましたの、ですが即興で、しかも伸ばしの途中から綺麗に入ってきたのですわ……まるで別人の声のようでしてよ……??」

「私も気付きましたね……私達以外にもその声がシャーリンだと気づいた人、何人はいるみたいです『3人でちゃんと歌っている所を聞かせてほしい!!』という声が割と多かったです」

「そうにゃ?」


私は元々猫なので歌うといっても、そこまで本気で歌ったことはないのだ。だから自分でも分かっていない……ということがある。


「では!全員でライブ対決するというのはどうですか!?」


1人の女の子が手を挙げる。周りは黙って軽く頷いている

私達も別に異論はなかった。


「ごめんそれってソロあるの?」


手を挙げたのはフランだった。私は意外なことに目を丸くする。理由はフランの性格的に『歌なんて面倒くさい。それをするならレースの練習する』という可能性の方が高いと思っていたのだ。


「意外だにゃ……」

「何が?ライブはレースにおいて必要不可欠、私はレースに関しては必ず勝っていくから表彰祭ワインドパレードの練習に良いでしょ?ソロの方が緊張もするだろうし」

「にゃ……にゃるほどにゃぁ……」

「やはりそっけないですわね……」


エリが私の耳元で呟く。でも私は嫌な気はしなかった、理由は、今まで私の独り言にフラン自ら反応したのは、初めての事だったからだ。

前のレース時は、私が隠れてついて行ったことを、注意したに過ぎない、今回は自分の意思で私に返答した。

そう考えると、私はついつい目をほころばしてしまう。


「どうしましたか?シャーリンさん」

「にゃんでもにゃいにゃ!!私は全然OKにゃ!!」

「では決まりですね!!私たちの出し物は……私達でトーナメントライブ対決です!!」


皆がおおおー!!と返事をした。

私達はこの時知る由もなかった……この何気なしに決まったライブ対決が……まさかの……あのようなことになることを……

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