第12話 いきなり鳥1級レースにゃー


 「うにゃああ~」


私は地獄のような授業を終え背伸びをする。何故地獄だったのかというと、先生に何回も当てられたため、この世界の事を全く知らないことが皆の前でも暴かれてしまったのだ。


「まぁ、気しなくていいですわ、まさか本当に新参者とは驚きましたわね……ですが、レース後のあのダンス的にも……初心者だとは思いましたわ」

「私もまさかね……歌えないとは思いませんでした」

「だって知らなかったんにゃ……」


私は2人からのさんざんの言われように下を向く。

ロミに関しては、体重の仕返しな気がしないこともないけど……


「でも別にそれが何に関係するの?結局は努力!それがないと勝てない!私も……才能に甘えてたこと後悔したから……だから……」


ミシュが真剣に私たちの顔をみる。

何やら真剣な目をしている。


「私は1ヶ月後開催される鳥1級レース『フライングロード』に出る」

「にゃにゃ!!?」

「ミシュさん……あなた本気ですの!?まだ正式に入学して初日ですのよ!?」

「……私は辞めといたほうがいいと思います。怪我でもしたらどうするのですか?」

「あまり急がなくてもいいですわ~ゆっくりと~5級とかのレースに出てからいきましょう~?」


私はこんなことで止まるようなミシュではないと確信していた。

しかし私的にはそんな確信など持ちたくはなかったのだが……。


「もう出走登録は済ませました。今すぐにでも……私は行きます」


とミシュは空を大きく見上げながら飛び立っていく。

私の目には、まるで姉の背中を追いかける妹のように映るのだった。

大体こういう時は、嫌な予感がする……前世の勘なのだろうか……?


「無理しないことを祈るしかないにゃ……」

「間違いなく無理しますわね……」

「とにかく私たちはミシュが無理をしない様に見張ること!」

「了解ですわ~私が面倒見ますわ~飛べますので~」

「もしもの時は……追いつけるにゃ??」

「もちろんですわ~私も速いですから~今のミシュさんなら追いつけますわ~」


(そういえばスライは蝶2級レースレコードと、連覇取っていたっけにゃ……何の戦績もないの私だけにゃあ)


私は、学園に来るときに聞いた話を思い出していた。


「やあああ!!」


空中トレーニングルームにて。

本来私たちは来てはいけない場所なのだが、特別に入れてもらうことにした。

そうして、練習場に着いた時にはミシュがもうすでに練習を始めていた。

ミシュは空に設置されている円形の障害物を猛スピードで潜り抜けている。


「いけませんわ~!あの飛び方だと羽が怪我してしまいます~!」


その様子を見たスライは慌てて網を持ち、飛び立つとそのままミシュを捕獲する。


「ちょっと何するの!?」

「無茶はしてはいけませんわ~怪我して才能の無駄使いをするおつもりですか~?」


2人は何やら空中で話し合っている。

私たちは正直、何を言っているのか全く分からない。


「にしてもよく捕まえれたにゃ……下手したら顔面強打にゃよ……」


スライが周りを確認し、私たちの前に降りてくる。


「少しいいですか?」


と後ろから先輩だろうか……の鳥族の女性が歩いてくる。

周りには、他の種族たちが私達のことを見ている


「この練習場は皆で使うもの、あんな無茶苦茶な飛び方されたら、周りが飛べない。少しは考えてください。まだ1年なんだから焦る必要もないでしょう?」

「すみません……」

「そしてあなたも」

「わたしですか~?」

「捕まえるのは慎重にするべきよ、あんな……強引な捕まえ方はこの種族を危険な目に合わせていた、可能性があります」

「分かりましたぁ~」

「はぁ……君たちは2週間ほどこの空中練習場を使うのは禁止です。先生にもそう伝えておきます」

「「すみませんでした……」」


ミシュとスライは深々と頭を下げるのだった。

やはり私の勘は当たった……


「そっかぁ……やっぱりそうなりましたか……」


スライの話を聞いて、ロミが頭を抱える。

私もミシュの性格的に、そうするだろうなとは思っていた。


「だから言ったのですわよ……正気ですの?と」

「それよりシャーリンは練習に来ませんでしたが、何かあったのですか?」

「それは……ミシュが心配でにゃ……」

「はい~私と一緒に見学しに行こうとしたのですけど~」

「そういうことだったのですわね……」

「ミシュはあの時……負けた時からずっと気にしている状態にゃ、なにかできないかにゃ……?」

「レースとはそういうもの~と言っても無理でしたわ~聞く耳持ちませんでしたもの~……」

「トラウマになっているのかもしれませんね……」


私達は何かできないか……そう考えるも結局、私たちは悩むだけで、答えは出なかった。

みんなとの話し合いは終わり、部屋に戻ると、私の椅子と机がきれいになっていた。

隣を見ると相変わらずフランは教科書を読んでいる。


「ありがとうにゃ……」

「綺麗にしてって言ったでしょ?話聞いてなかったの?」

「うっ……ごめんにゃ……」


(汚いのが目障りで掃除したんかにゃ……)


「そういえば練習初日早々にあなた達、問題起こしたそうじゃない、いったい何をしてるの?私たちの練習を丸1日邪魔したの分かってる?あり得ないわよ?本当に」

「それは……」

「今回はミシュとスライの責任になったけど、あなたにも責任があること覚えておいて。これ以上あなたたちに問題起こされると困るのよ。もう噂は広がってる、あなた達これから大変よ?」


噂が広まり、大変になることは覚悟していた。でもここまでしんどいとは思っていなかった。帰るときも周りの人たちが、私たちに聞こえるような小声で話していたし……

その時のミシュは……正直絶望していた顔をしていた。


そして2週間後、私とロミ・エリは練習終わりに、上空練習場に顔を出した。

しかしそこにミシュの姿はなかった。

使用禁止は、今日の昼に解除されると聞いていたため、いないのはおかしいのだ。

上からスライが降りてくる。


「ミシュはどうしたにゃ??」

「それがですね~……」


スライが言うにはもう練習には行きたくない。と布団に入り込んでしまっているらしいのだ。

頑張ったことが空回りして、注意されると、やる気を失ってしまう気持ちは分かる。


「でも講義には来てましたよね?」


「講義に出ないとレースに出られませんわ。ただ……『フライングロード』までもうわずかですわね……本当に大丈夫ですの?」

「まぁ~また気が向いたら来ると思いますわ~今は~ちょっと怖いだけかもしれませんし~」

「だと良いけどにゃ……」

「スライさんは大丈夫なんですね……」

「私はメンタル強いですから~煽られたならそれ以上の力を見せて叩き潰すだけですわ~」

「相変わらず物騒ですわね……」

「そういう性格ですから~」


私達は、とりあえずあまり刺激せず、ミシュの様子を見守ることにした。

その日からさらに1週間が経ち、明日が本番の『フライングロード』にもかかわらず。ミシュが練習場に現れることはなかった。


そうして出場した『フライングロード』では1位と1時間も遅れ24人中最下位で終わってしまうのだった。

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